じつは「ビッグバンによって宇宙ができた説」は問題だらけ…残されたナゾと通説に挑む新理論を一挙紹介!
138億年前、点にも満たない極小のエネルギーの塊からこの宇宙は誕生した。そこから物質、地球、生命が生まれ、私たちの存在に至る。しかし、ふと冷静になって考えると、誰も見たことがない「宇宙の起源」をどのように解明するというのか、という疑問がわかないだろうか? 【写真】いったい、どのようにこの世界はできたのか…「宇宙の起源」に迫る 本連載では、第一線の研究者たちが基礎から最先端までを徹底的に解説した『宇宙と物質の起源』より、宇宙の大いなる謎解きにご案内しよう。 *本記事は、高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所・編『宇宙と物質の起源「見えない世界」を理解する』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。
ビッグバン宇宙モデルの問題点
ビッグバン宇宙モデルですが、ある決定的な問題があることがわかってきました。本記事ではそのお話をしたいと思います。 遠くを見ることは、過去の宇宙を見ることに相当します。例えば、うみへび座銀河団までの距離は約1億6000万光年です。地球で1億6000万年前といえば、ジュラ紀の中期から後期にさしかかるという恐竜が全盛の時代です。その時期にうみへび座銀河団を出た光が、現在、地球で観測されているのです。逆に、うみへび座銀河団に住んでいる宇宙人たちは、ジュラ紀の地球から出た光を、現在観測しているのです。彼らは、現在の地球には恐竜がいると判断してしまうのでしょうが、やむを得ません。 火の玉のなごりの電波は、宇宙誕生から約38万年後に発せられました。その時期に火の玉宇宙が透明になり、光が散乱されずに直進できるようになったのです。現在は、138億年かけて飛んできた138億年前の約0.3eVのエネルギーの光を見ることができます。どの方向を見ても約10万分の1の精度で絶対温度で約3度(マイナス270℃)なのです。宇宙誕生38万年でも、現在から見ると、138億年前の宇宙の地平線から飛んできているのです。138億年から38万年を引いても、近似として約138億年ですね。それは赤方偏移を受けて、現在は絶対温度3度の電波になっているのです。大事なことは、その方向から138億年かけて初めて宇宙の地平線の近辺(138億年マイナス38万年ですが)から地球にたどり着いたということです。一方、その反対からも、観測事実として、同じ絶対温度3度の電波がやって来ています。 ここで、不思議なことが起こっていることにお気付きでしょうか? 光の速度で飛んでも、今まで決して出会うことのなかった宇宙の端と反対側の端から138億年かけて飛んできた光の温度が同じということを言っているのです。反対方向の端から端までの距離を測ると、単純に138億光年の約2倍ということになります。宇宙の年齢は138億歳ですから、2倍の276億光年離れた場所の両者の光子は因果関係をもたないはずです。それなのに、地球で測定されたときに同じ温度になっているのです。この不思議な矛盾は「宇宙の地平線問題」と呼ばれます。