奥能登に労災多発警報 復旧工事現場39件、3カ月連続で死亡事故
●冬場の二次災害懸念 能登半島地震からの復旧復興に向けた工事現場で労働災害が相次いでいる。復旧工事での労災件数は10月末時点で39件に上り、9月から3カ月連続で死亡者が出る事態に。これを受け6日、奥能登2市2町を所管する穴水労働基準監督署は「重篤労働災害多発警報」を発令、石川労働局も関係団体に安全対策の徹底を求める緊急要請を出したと発表した。震災発生から1年を前に工事の進展を望む声は強い一方、悪天候が予想される冬場を迎え「二次災害」への懸念が広がっている。 労働局によると、石川県内全体の建設業の労災は、10月末時点で前年同期比5割増の129件(新型コロナ関連を除く)。11月までの死亡事故は6件で、うち3件が地震関連だった。 輪島市の国道249号中屋トンネル付近では9月の奥能登豪雨で、50代の作業員が土砂崩れに巻き込まれて亡くなった。11月には、珠洲市内の被災した木造家屋の自費解体現場で、廃材が入ったバッグを重機先端の爪に引っかけようと作業していた岩手県の70代男性が、その爪に頭を挟まれ、頭蓋骨骨折で死亡した。 ●墜落・転落が最多 地震の復旧工事が本格化した4月以降、そうした現場での労災が毎月のように発生。事故の内容別では「墜落・転落」が38%と最も多く、「挟まれ・巻き込まれ」が15%で続いている。公費解体など家屋解体工事の現場が全体の41%を占め、仮設住宅の建築工事が28%となっている。 労働局は4日付で、県労働基準協会連合会、県建設産業連合会など建設関係の15団体と、工事を発注する国土交通省金沢河川国道事務所、県土木部など8機関に労災防止への配慮を求める依頼文を送った。警報を発出した穴水労働基準監督署は、来年3月末まで解体工事現場の監督指導を強化する。 ●通常工事より慎重に 復旧作業は、通常の工事現場に比べて環境が悪いケースが多く、複数の重機を同時に動かすことがあることから、労働局はより慎重な対策が求められると指摘。「悪天候時の対策や作業中止、再開時の点検を徹底し、緊急連絡体制や避難方法を確認してほしい」と呼び掛けている。