テレビ人生60年 柔らかな「反骨心」 関口宏という生き方/1 『サンデーモーニング』とはどんな場なのか
それほどの人気番組の宿命でもあったろう、時に容赦ない批判の的とされ、近年では「一強」政権の下、一方の側からは「偏向番組」と怨嗟(えんさ)の罵声を浴び、一方の側からは「現下テレビ界で数少ない良心的番組」と熱心な称賛を受けた。 ◇一方からは「良心的」、一方からは「偏向」 そんな番組の制作を率い、司会役も務めた関口さんとは本質的に何者か。〝お化け〟と称される人気番組はどう形作られ、なぜ圧倒的支持を受けつづけたのか。また、これも近年は劣化と萎縮の空気が蔓延(まんえん)していると囁(ささや)かれるメディア界にあって、一方からは「良心的」と称賛されつつ一方からは「偏向」と罵(ののし)られた番組は、政治の恫喝(どうかつ)や圧力にどう抗してきたのか。そしてテレビとテレビジャーナリズムはいかにあるべきだと関口さんは捉えてきたのか―そうしたことごとを、関口さんへの直接インタビューを軸とし、少々異例ではあるのだが、数回にわたって解きあかすのが本リポートの目的である。 ただ、本論に入る前にお断りしておかねばならない。ご存じのとおり、関口さん率いた『サンデーモーニング』には近年、私もコメンテーターの一人としてその片隅に直接関わってきた。そういう意味で私は、関口さんや番組を客観的に論じられる第三者ではない。もちろん、ジャーナリストとして紡ぐ本稿では可能な限り客観的立場に徹するつもりだが、いくらそう強調しても、読者の多くは素直に飲み込むことなどできないだろう。 したがって本稿は、関口宏という人物と彼が率いた人気番組の、その片隅に直接関わって双方を内側から目撃した者の報告として読んでほしい。だから、通常のルポや記事なら避けるべきだろうが、普段どおりに「関口さん」と呼んで書き進めることもお許しいただきたい。 さて、本稿を書くにあたり、あらためて関口さんに長時間のインタビューを行ったのは4月9日。番組から「消える」と告げて10日も経(た)っていない時点だったから、私は直截(ちょくせつ)に問うた。関口さんにとって『サンデーモーニング』とはいったい何だったのですか、と。一瞬考えて関口さんはこう応じた。