日本代表がW杯ベスト8を目指すなら…。ドローで見えた課題。いま唯一足りていないものとは?【西部の目】
15日夜、日本代表は2026年FIFAワールドカップ(W杯)アジア最終予選のオーストラリア代表戦を埼玉スタジアム2002で迎え、1-1の引き分けに終わった。4連勝とはならなかったものの、豪華な攻撃陣の選手交代で再三チャンスを作っていた。それでも勝ち切れなかった要因とは何だったのだろうか。(文:西部謙司) 【順位表】2026年ワールドカップ(W杯)アジア最終予選
⚫️まるで恐さのないオーストラリアの攻撃。しかし…
勝つべき試合を引き分けたという印象だ。オーストラリア代表のシュートは枠外のわずか1本。日本代表の攻勢が続き、相手はひたすら引いて守る展開は中国代表、バーレーン代表との2試合とほぼ同じである。ただ、大勝だった2試合とは違い、オウンゴールによる1得点にとどまった。 体調不良の遠藤航に代わって田中碧。右シャドーに久保建英が先発したのがサウジアラビア代表戦との変更点。超攻撃的3-4-2-1システムは継続。 オーストラリアも同じシステム。前線から数を合わせて守るが、そこは想定していたようで守田英正が下がって数的優位を確保する。一方、オーストラリアは全くといっていいくらいビルドアップができない。ほぼワンサイドゲームとなった要因だ。 トップにロングボールを蹴って、セカンドボールを拾う。オーストラリアの攻撃プランは明白だった。アジアカップでイラン代表が示した有効な対日本の攻略法だが、ロングボールを蹴る位置があまりにも低かった。 ボールを前進させられず、GKかDFが自陣深くから蹴るのでボールの落下点はハーフウェイラインを越える程度。ゴールまでは40~50mもあり、ここで競り落としても日本の脅威にはならない。 しかも、全体が引いている状態のまま蹴り出すのでセカンドボールも拾えない。日本は難なくボールを回収して攻め直すことができた。 だが、まるで恐さのない攻撃とは対照的に、オーストラリアの守備は固かった。
⚫️前半で唯一可能性を感じたのは…
フラットな5バックの裏を狙った攻め込み、左の三笘薫のドリブル突破でゴールへ迫るが、惜しいところまでいっても決定機は作れない。 右の久保と堂安律のコンビも最後のところを突破しきれなかった。スタートポジションは久保が右シャドー、堂安が右ウイングバック(WB)だが、敵陣では入れ替わることが多かった。 しかし、久保はドリブルで抜き切るまでいかず。不用意にボールを失うケースも2回あった。2回目は1対1の勝負を仕掛けて奪われ、そこからのカウンターでペナルティーエリア内まで侵入された。板倉滉と谷口彰悟が挟み込んで奪い返したが唯一危ない場面だった。 久保はレアル・ソシエダと同じく右に開いて仕掛け、さらに堂安とのコンビネーションが期待された。しかし、三笘や伊東のようなスピードがないので、一瞬でえぐるプレーにはならない。右はやや手詰まり感があり、はっきりした武器は三笘の突破に限られていた。 後半に入ると右の攻め込みが活性化。53分、久保が縦に突破して惜しいクロスボールを送る。右に開くだけでなく、ハーフスペースで縦パスを受けるようにもなった。57分には南野拓実へピンポイントのクロス。南野のヘディングはわずかに枠を外れたが、ここまでで最大のチャンスだった。 ところが、その直後の58分にオーストラリアが先制。右からのクロスを谷口がクリアしようとしたがオウンゴールになってしまった。オーストラリアは初めてロングボールのこぼれ球を日本陣内で拾えていて、その流れからの得点だった。