「2段階の"降格"は非常に稀」…「ミシュラン」鳥羽シェフ星ならず!"内定"発言は? 返り咲きは…
歴史ある名店が再注目された『ミシュランガイド東京2024』…鳥羽シェフ復活の可能性
一般的には知られていないが、ミシュランガイドの発表会では、招待されたレストラン関係者にも評価は知らされていない(メディアはセレモニー直前に知らされる)。最低でもビブグルマンであることは確かだが、星である確証はないのだ。何度も星の常連シェフや三つ星の料理人に確認したことがあるが、誰一人として何も知らされていないという。 実際のところ、「sio」は素晴らしいレストランで、私も好印象をもっている。様々な食材を用いたフレンチとイタリアンベースの料理で、最後は食事で〆るという、10皿程度の多皿コース。ワインペアリングはフランス各地を中心にしながらも、日本酒を取り入れたりしている。 店内はゲストの活気に溢れており、サービスは堅苦しくなくてフレンドリーだ。駅からのアクセスも抜群で、普通に利用していれば、ディナーでもコースとワインを合わせても2万円台となる。星つきレストランとしては非常に良心的な価格なので、予約も簡単ではない。 したがって、ミシュランガイドの調査員が、一つ星以上のクオリティがあると判断するのは納得できることだろう。ただ、星として掲載するには大きなリスクが生じる。かといって、レストランとしてクオリティが低い訳ではない。その“落としどころ”が、’23年から創設されたセレクテッドレストランではないだろうか。 ミシュランガイドにおける「sio」の料理ジャンルは、’22年発表の『ミシュランガイド東京2023』ではイノベーティブ、’23年発表の『ミシュランガイド東京2024』では現代風料理となっている。しかし、鳥羽氏が紡ぐ料理のベースはフランス料理とイタリア料理だ。 『ミシュランガイド東京2024』では、名店フランス料理の再評価が行われた。「銀座レカン」「モノリス」が一つ星に、「アラジン」「サカキ」「ポンドール・イノ」「アピシウス」「ブーケ・ド・フランス」「ラ・ロシェル南青山」「ル・ブルギニオン」「ボンシュマン」がセレクテッドレストランにと、多くのゲストに愛され、歴史ある名店が新しく登場したのだ。 ミシュランガイドの調査員は毎年、レストランをリストアップして厳正に審査している。それ故に、流行のレストランだけではなく、一度星を落としたり、かつては隆盛を誇っていたりしたレストランにも引き続き訪れているので、再び掲載されることがあるのだ。 最近のミシュランガイドの傾向としては、シェフが実際にいないレストランに対しては手厳しい。先に挙げた評価項目の中で「安定した一貫性」があるが、この重要性が高まっているように感じられる。 鳥羽氏が、プロデュースシェフや芸能人シェフとしての役割を控え、自身の大切な旗艦店で実直にフランス料理やイタリア料理の本質を追求しながらも、クリエイティビティを発揮し、“星内定”を公言さえしなければ、「sio」が一つ星として復帰するのは、かなり早いのではなかろうか。 文:東龍 ’76年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で’02年と’07年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。
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