『呪怨』の俊雄くんサイドから語るストーリーということも考えられます【みうらじゅんの映画チラシ放談】『変な家』『DOGMAN ドッグマン』
みうらじゅんさんの前に近々公開される映画のチラシを大量にお持ちして、グッとくるチラシを厳正にピックアップ。映画本編は観ていないので事前知識はほぼゼロ、頼りになるのはチラシ内の情報(と妄想)だけという状態で語っていただく、言いっぱなしの映画チラシ放談です。(ぴあアプリ「みうらじゅんの映画チラシ放談」より転載) 【全ての画像】『変な家』『DOGMAN ドッグマン』
『変な家』
――今回の1枚目のチラシは、間取り図をあしらったデザインの『変な家』です。 みうら 僕、旅先で不動産屋の前に貼ってある間取り図を写真に撮っておく癖が昔からあってね。 旅っていうのは、行って帰ってくるまでが旅じゃないですか。結局、その土地に訪れた他県から来た者っていうことになりますよね。でも、その街に住んでみようかなという気持ちで旅を始めると、かなり街の見方が変わるというか。当然、次に思うことは、じゃあどんな家に住もうかってなりますよね。 家賃にしても、ここはいくらかなとか、敷金は何ヵ月分かな?とか考えてると、そこで見つけた物件、見に行ってみようかなって思ったり。でもね、中には駅前でとても便利なのに家賃が安すぎるんじゃないかなと思う物件があったりするわけでね。 たぶん、この映画ってそういう話ですよ。何かあるから安い。それ、すなわち『変な家』。岡本太郎デザインの家じゃなくってね。 ま、フツーに考えれば“出る”っていうことでしょうけどね? ――つまりジャンルはホラーってことですか? みうら 問題は、ホラー映画なのか、それとも不動産屋さんの映画なのかっていうことですよね。 間取りが変というか、その当時にちょっと流行ってたオシャレな作りにしたために、トイレの導線がすごく通りにくかったり、そういう変さも不動産屋映画としてはアリでしょうから。 たぶんこの映画では佐藤二朗さんが不動産屋の方でしょう。この街に住むことになった若者に、「この間取りがちょっと変なんで、安くしてあります」って言うわけです。「僕、大丈夫です、別に気になりませんから」って若者は言うんでしょう。それで、契約して、安い物件に住めてめでたしめでたし……という、話ではね、映画としてはどうでしょうねぇ(笑)。 ――そんなほのぼのとした映画だったらびっくりしますね。 みうら あ、チラシにやっぱ「ゾクっとミステリー」って書いてありますね。チラシ裏面の若者も「いい物件に当たって良かったです!」って顔はしてませんね。となると、ゾクッとの問題は間取りのことですね。 オシャレにしてあるもんで、押し入れがやたら少ないとか? ――このチラシの間取りも押し入れがないですね。 みうら でしょ? オシャレは押し入れを排除しますから。要するに『呪怨』の白いあの子の居場所がないってことですよ。 ――俊雄くんですね。たしかにこれだと俊雄スペースがないですね。ホラーだったら不利な家ですね。 みうら ですよ。ゾクッとミステリーを感じるのが、これじゃ俊雄くんの方です。となると、俊雄くんサイドから語るストーリーということも考えられます。「これじゃオレの居場所がねえじゃねえか!」っていう。ハハーン、この若者は俊雄くんが成長した姿じゃないですかねぇ。 つまり不動産屋さんが「ダメダメ! そこは変な家だから」と言って勧めようとしない映画。佐藤さんの方が怪しいです。 ――これ、リビングにテレビ置く場所もないですね。 みうら あ、そこにもこの映画のヒントがありますよ。それでは貞子も出てこられないってことになりますから。 ――いや、そこまでは考えてませんでした(笑)。 みうら 現代のことを考えて、スマホ画面からも貞子は出るのかもしれませんが、これじゃ貞子からも「変な家」と言われても仕方ありません。ま、最近の若い人はテレビを見ないらしいですからね。 この間取りでは台所からダイニングテーブルまでもだいぶ遠いですけど、それによってまた出にくくなるヤツもいるんじゃないですかね。 ――今、このチラシ作った人は大喜びでしょうね。我々がまんまとハマってますね。 みうら ですよね(笑)。やっぱり見る方も出る方も、よく不動産屋さんで間取りを知ってから入居されるのがいいでしょうね。