八門遁甲ライブシリーズ開催のLLR、THE SECONDへの思い「M-1から流れてくる組に負けたくない」
LLR(福田恵悟、伊藤智博)が来年のTHE SECONDへ向けて「LLRの八門遁甲ライブ~決勝でやるネタをみんなで決めるライブ~」をスタートさせた。 【写真を見る】「LLRの八門遁甲ライブ~決勝でやるネタをみんなで決めるライブ~」をスタートさせたLLR 今年のTHE SECONDではノックアウトステージ32で敗退しているだけに、来年に懸ける思いは強い。改めて賞レースと向き合う意味、これまでのキャリアなどについてインタビューで語ってもらった。 ――2023年から、結成16年以上の漫才師による賞レース「THE SECOND~漫才トーナメント~」ができました。発表当初はどのような気持ちでしたか? 福田「最初はよくわかんなかったんですけど、出てみたら面白かったです。M-1グランプリが15年で終わって、大会がない時代がありました。ない時代があると、何をやっていいかわかんなくなるんですよね。すごい面白い漫才を考える必要なんてないわけで。でも、大会となるとそういうわけにはいかない。だから、大会って楽しいなと思います。M-1も同じ気持ちでやればよかったです。M-1に出ている時って『またこの季節が来た』という嫌な気持ちなんですけど、それは恵まれた嫌な気持ちだったなと実感しましたね」 伊藤「僕もTHE SECONDは最初どういうものかわからず、おじさんたちのふざけた大会なのかなと思っていました。予選もわからない中やっていたんですけど、本戦をテレビで見たらトーナメントという形でちゃんと面白くて。M-1の予選はいっぱいいる中から合格が発表されるので、芸人同士の勝ち負けがよくわかんないじゃないですか。それがお客さんの票数で勝負をつけるというのは面白いなと思いました」 ――M-1グランプリの話も出ましたが、THE SECONDとの違いはどこにありますか? 福田「M-1は制限時間が4分しかないですし、競技性の漫才という感じですね。THE SECONDはそういうやつもいれば、寄席のネタをするやつもいる。M-1は脚本が良くないといけないですけど、THE SECONDは人間性やキャラクターなど込み込みでいろんな要素がありますね」 ――伊藤さんの話にもありましたが、勝ち上がっていくシステムも違いますよね。 福田「THE SECONDの良いところは予選の選考会が1回だけなんですよ。だから、自分がいいと思ったネタを1回だけやればいい。M-1のように『ここは1回戦だから』とか考えなくていい。非常にシンプルですよね」 ――THE SECONDの1対1で勝敗を決めるというルールは業界内でも評判がいいですよね。 福田「僕もいいと思います。これ以上うまくやることは無理なんじゃないですか。有利と不利はあってもいいですし」 伊藤「2本とも見て点数つけるとか、芸人のことを考えてくれているなと思いましたね」 ――過去2回、ギャロップとガクテンソクが優勝し、舞台出番やテレビ出演なども増加したように思います。ああいう未来図を描いていますか? 福田「僕らの年代になると、取らぬ狸の皮算用、通称『トラタヌ』って言うんですけど...」 伊藤「聞いたことないよ」 福田「トラタヌをやればやるほどさみしい気持ちになるので、やらないようにしています」 伊藤「後からついてくるものですからね」 福田「ただ、昔と今で状況が違いますよね。昔はM-1優勝してテレビ出たら緊張するだろうなと思いますけど、今はテレビ出たら友達しか周りにいないんですよ。だから、ライブに出るのと同じ感覚だろうなと思います」 ――来年、優勝するためになにか工夫は考えていますか? 福田「まず(THE SECONDの)選考会ですね。そこをどう乗り切るかが大事だと思います。選考会でいい結果を出すと、ポット分けで後攻に入れるんですよ。1回戦後攻をとれたらめちゃくちゃ有利なんですよ」 伊藤「(本戦に出場する)ベスト8を見たらほとんどポットAなんじゃないですかね」 ――本戦に行くまでが重要ということですね。 福田「本戦に入るとわかんないですね。ガクテンソクの奥田も『ノックアウトステージ32になって直接対決になったら運ですよ』と言っていました。1回戦で勝ったら、得点数で次の先攻・後攻が決まる。同じくらい面白くても対戦によって点数が変わるので、運の要素は大きいと思いました」 伊藤「ノックアウトステージ32から5回勝たないと優勝できないので、運の要素もだいぶありますね。だから、初代王者のギャロップさんはめちゃくちゃすごいなと思いました」 ――ザ・パンチや囲碁将棋、金属バットなど強敵はたくさんいますが、ライバルと見ているコンビはいますか? 福田「負けたくないとかはないですね」 伊藤「(笑)。みんなそうだと思うんですけど、THE SECONDはギラギラしていないんですよ」 福田「ただ、M-1から流れてくる組に僕らおじさん世代が負けたくないというのはありますね」 ――2002年結成で、2014年にTHE MANZAIで認定漫才師に選出。約20年間の芸能活動をどう評価していますか? 福田「運がいいのかなと思っています。普通ならやめていると思うんですけど、なんか続けてられていますね」 伊藤「芸人って普通浮き沈みがあると思うんですけど、それがあまりないなと。一番程遠いはずの安定を手にしていますね(笑)」 ――やはり舞台があったのが大きかったんでしょうか? 伊藤「ありがたいことにそれもありますし、2人とも東京出身なので、何かを捨てて来ているわけでもないですし、それで続けてこられました」 ――確かにそれはありますよね。デビュー当初はどんな芸人になりたいと思っていたんでしょうか? 福田「東京出身だと芸人さんをあまり知らなくて、テレビに出ている芸人さんしか知りませんでした。NSC時代にM-1が始まったんですけど、僕はナインティナインさんとかテレビの有名人が出てくると思っていました。だから、知っている芸人さんがキングコングさんやおぎやはぎさん、DonDokoDonさんくらいしかいなくて、こういう大会なんだと驚きましたね」 伊藤「僕は始めた当初はお笑いもよくわかってなくて、ネタもわかっていなかったです。芸人さんもダウンタウンさんやナイナイさん、とんねるずさんくらいしか知りませんでしたね」 ――では、先輩を見てどんどん芸人に近づいていった感じなんですかね? 福田「それもそうですし、劇場ですね。ルミネ(ルミネtheよしもと)しかなかったので、どんどんこなして、ランクアップしていく感覚でした。当時はよくわかっていなくて、ルミネのランクで一番上にいったらテレビに出られるのかなと思っていましたね」 ――芸人としてターニングポイントとなった出来事はありましたか? 福田「5、6年目で始まった配信番組の『AGE AGE LIVE』ですかね。その影響で人気が出て給料も上がったんですよ。今の若手と比べると全然大したことはないですけど、当時の僕らからしたら大きかったです。ただ、それが良かったか悪かったかは微妙ですね。若手は家賃も安いところに住んでいたので、毎日飲み歩いたりできちゃう。そこから何も努力していないんじゃないかなって説はあります(笑)」 伊藤「『AGE AGE LIVE』が始まって仕事感が出てきたというか、芸人という仕事をしているんだという気持ちになりました」 ――今の若手は全く別というか、毎日飲み歩くみたいな話は聞かない気がします。 福田「今はいないんじゃないですかね。たとえば、ダイタクは飲むし、ギャンブルもやるけど、お笑いに関してはめちゃくちゃ真面目なんですよ。僕らの時代は舞台の時間以外でお笑いのことを考えるやつなんていなかったですから」 伊藤「確かにね(笑)。今の若手が『AGE AGE LIVE』を見て一番びっくりしていたのが、全員私服で出ていること。当時、スーツで漫才やる芸人はいなかったんですよ。私服でぷらっと出て漫才やって帰るみたいな感覚で、今とはお笑いに対する向き合い方が違うなと思いますね」 ――今後の意気込みを教えてください! 福田「やっぱりこういうライブ(八門遁甲)をやって、自分たちで実現に向けてやっていくことが一番かなと。今までは『こういうのをやってダメだったら恥ずかしい』と気持ちがあったんですけど、今年は自分たちで自分たちを追い込んでいきたいです。 伊藤「確かに今まで『これ目指してます』みたいなのは口に出してこなかったので、今年はTHE SECONDに向けて頑張っていきたい。THE SECONDはお客さん票で決まる大会なので、お客さんの意見を大事にしていきたいなと思います」 取材・文=まっつ
HOMINIS