【イベントレポート】「演劇ドラフトグランプリ」最終章が閉幕、荒牧慶彦「2.5次元が1つの文化になり得ると心から思う」
「演劇ドラフトグランプリ THE FINAL」が昨日12月10日に東京・日本武道館で開催され、荒牧慶彦が座長を務める劇団「雪猿」がグランプリに輝いた。 【画像】「演劇ドラフトグランプリ THE FINAL」より、優勝旗を掲げる荒牧慶彦(写真中央)。(撮影:小境勝巳・佐藤 薫・高田真希子・冨田唯我)(他20件) 「演劇ドラフトグランプリ」は、荒牧のプロデュースで2022年より開催されてきた“ガチンコ演劇バトル”。3年目にしてファイナルとなる今回は、荒牧、染谷俊之、玉城裕規、七海ひろき、須賀健太が座長を務める5チームが参戦した。各チームは、15分以上20分以内の演目、オリジナル脚本、衣裳チェンジなし、大道具使用不可というルールのもとで作品を披露し、会場にいる審査員と観客、ライブ配信視聴者による投票で優勝チームが決定する。イベントは山寺宏一の総合司会で進行し、ナビゲーターを阿部顕嵐、山寺のサポートを高野洸、現場レポーターを福澤侑と高橋怜也が担った。 オープニングアクトには、昨年の参加劇団「一番星」から派生したアイドルグループ・THE FIRST STARが登場。ペンライトの光が揺れる中、よしぽん(荒牧)、ゆーくん(福澤)、ハニー(木津つばさ)、ほゆ(松井勇歩)、りょっちん(高橋)が息の合ったパフォーマンスを披露し、会場を温めた。 優勝した劇団「雪猿」が上演したのは、三浦香演出による「ツンドラクリーム」。作中では、雪山を舞台に、雪女(荒牧)、救助隊(松田昇大)、そして未来から来たギャルの親友2人(廣野凌大、持田悠生)とトナカイと人間のハーフ(砂川脩弥)による、家族と友情の物語が展開した。キャスト5人は、これらの突飛なキャラクター同士のやり取りを柔軟な表現力で見せ、会場に爆笑の渦を巻き起こす。同時に、大切な人のために行動する強さを軽やかに描き出した。 イベントでは劇団「雪猿」のほか、4チームが個性豊かな作品をぶつけ合った。劇団「演劇やろうぜ」は、毛利亘宏演出による「約束のピクニック」で、舞台上で実際に料理を完成させる。わちゃわちゃした様子に会場がほっこりした空気で満たされる中、生と死で隔てられた友人たちの互いを思いやる姿が丁寧に紡がれた。劇団「SADAMEN」は、中屋敷法仁演出のもと、時代劇「運命と知るべし」を披露。武士一家の三世代の信念が交錯する濃密なストーリーが、シリアスとコメディを行き来しながら熱量高く立ち上げられた。 劇団「アクタゴン」は、小道具なし、白い衣裳というシンプルな装いに立ち返り、川尻恵太演出の“輪廻転生”を巡る会話劇「再生する」を上演。途中で全員がステージからはけていなくなる斬新な演出に、客席からどよめきの声が上がる一面も。一方、劇団「勝部」は、私オムが演出する青春物語「敗部の叫び」で、廃部寸前の応援団員が演劇部に加入し、頼もしく成長していく様を通して観客にエールを届けた。 3年目を迎えた今回の「演劇ドラフトグランプリ」は、過去2回の試行錯誤の積み重ねが実を結び、粒ぞろいの作品が並んだ。出演者・演出家たちのファイナルにかける思いが投影されたかのような、生と死を扱う作品や、“武道館の空間を生かす”だけでなく、“武道館で誰もやったことがないことをやる”などの挑戦的な作品が目立った。 表彰式でグランプリの劇団名が山寺により読み上げられると、劇団「雪猿」の面々は拍手を浴び、ナビゲーターの阿部から座長の荒牧に優勝旗が贈られた。三浦は感謝を口にしながら「プロデューサーであり座長の荒牧さんに、どうしてもグランプリを獲っていただきたいと思っていました。最初、メンバーのみんなからは雪女の設定に疑問を持たれたのですが、私は本気でした(笑)。みんなと熱くやりました!」と清々しい表情でコメント。荒牧は「プロットをいただいたときは、『この人、酒飲みながら書いたのかな?』と思ったのですが(笑)、(三浦が)お客様を楽しませることに集中している様子に、僕自身も『真剣に臨まねば』と思いました」と振り返り、優勝の喜びを語った。 最後に荒牧がプロデューサーとして、「勝手ながら、2.5次元の分野で活躍するキャスト・クリエイターの才能たちをいろいろな方々に認めてもらいたいという思いで、ここまでやってきました。僕が歩いているのは道なき道なのではないかという不安も抱きましたが、ふと後ろを振り返ると立派な道ができていて、たくさんの人たちが歩いている。僕の願いは達成されていると思います」と心境を語った。さらに、演劇やエンタテインメントの世界の可能性の多さに言及しながら、「道ができ、人が集まれば、それは1つの町、1つの文化となります。僕は2.5次元が1つの文化になり得る、心からそう思っています」と言葉に力を込める。「演劇ドラフトグランプリ」については「ここにいる仲間や、ファンの方々が心からの笑顔で楽しんでくれました。ひとまずは区切りをつけて、それぞれの道を歩んでいければ」と述べ、ファンに向けて「いつもそばにいてくれてありがとうございます」と感謝を伝えた。 なおシアターコンプレックスTOWNでは、見逃し配信が1月5日まで行われる。12月20日20:00からは本編映像に加え、メイキング映像も視聴可能となる。 ■ 演劇ドラフトグランプリ THE FINAL 2024年12月10日(火) ※公演終了 東京都 日本武道館 □ スタッフ 総合演出:植木豪 荒牧慶彦チーム 演出:三浦香 染谷俊之チーム 演出:毛利亘宏 玉城裕規チーム 演出:中屋敷法仁 七海ひろきチーム 演出:私オム 須賀健太チーム 演出:川尻恵太 □ 出演 総合司会:山寺宏一 ナビゲーター:阿部顕嵐 現場レポーター:高野洸 / 福澤侑 荒牧慶彦チーム 座長:荒牧慶彦 劇団員:砂川脩弥 / 廣野凌大 / 松田昇大 / 持田悠生 染谷俊之チーム 座長:染谷俊之 劇団員:佐藤信長 / 田中涼星 / 富田翔 / 古谷大和 玉城裕規チーム 座長:玉城裕規 劇団員:植田圭輔 / 高木俊 / 服部武雄 / 松島勇之介 七海ひろきチーム 座長:七海ひろき 劇団員:木津つばさ / 椎名鯛造 / 高橋祐理 / 萩野崇 須賀健太チーム 座長:須賀健太 劇団員:唐橋充 / 松井勇歩 / 三井淳平 / 山崎晶吾 ※高木俊の「高」ははしご高、山崎晶吾の「崎」は立つ崎(たつさき)が正式表記。 (c)演劇ドラフトグランプリ THE FINAL