行ってわかった「イトーヨーカドー」戦略エリアでも閉店の理由、今後は大阪・兵庫・愛知の店舗が焦点
ヨーカ堂の祖業でもある衣料品は、専門店やECの台頭で慢性的な赤字が続いており、昨年3月、ついに2025年度末までに直営販売からの完全撤退が公表された。それまでも中期経営計画のたびに直営衣料品売り場縮小やテナント化の方針が打ち出されていたが、柏店全8フロアのうち、3フロアを衣料品が占め、その多くが直営売り場であることを考えると、どこまで過去の方針が徹底されてきたかは疑問だ。 同じ上層階でも、衣料品と対照的なのはさらに昇った6階だ。中古本チェーンの「ブックオフ」がフロア全体に出店しており、柏店の中で食品売り場に次ぐ賑わいを見せている。
記者が訪れたときも、商品が入ったクリアケースを前に談笑するサブカル系サークルと見られる若者や、帰りがけにビジネス書や参考書、漫画を選ぶサラリーマンや学生が多く見られた。トレーディングカード売り場中央に設けられた遊戯スペースは、小中高生や大学生で常に満席で、館としてのポテンシャルの高さを感じた。 柏市の商工観光課の担当者も「駅周辺の家賃は年々上昇しており、空きテナントもすぐに埋まってしまう」と話す。もしヨーカ堂が早期から抜本的な衣料品売り場の縮小、テナントの誘致を進めていれば、館全体の集客力・収益性を改善させ、撤退にまで追い込まれることは防げたかもしれない。
次に取り上げるのが、埼玉県川越市にある「イトーヨーカドー食品館 川越店」だ。 川越店は総合スーパーとして1967年に開業し、再開発後の2019年に2階建ての小型食品スーパー業態としてオープンしたばかり。西武新宿線の本川越駅から徒歩1分と、こちらも駅前好立地だ。 食品スーパーとしては珍しく、生鮮食品は1階ではなく2階中心に取り扱う。1階は総菜など即食商品の品ぞろえを強化し、周辺の通勤客や共働き世帯などの簡便ニーズを取り込もうという狙いだった。
■駅前立地でも休日の集客に苦戦 ヨーカ堂は「首都圏と食という、まだ勝てる見込みのある地域、事業に経営資源を集中させる」(山本哲也社長)という方針を掲げており、川越店はその両方に当てはまる。他チェーンの幹部も市場調査に頻繁に訪れており、一時は戦略店舗とさえいわれていた。しかし今年7月、リニューアルオープンから4年も経たずに撤退という結末を迎える。 競合の見方は冷静だ。大手チェーンの幹部は「平日の帰宅客はとれていたみたいだが、休日はガラガラ。地元客のヘビーユーザーを作れていないのでは」と話す。