爆音EVの愛嬌 アバルト500e上陸 試乗へ 個性派の誕生
新登場アバルト・チンクェチェントイー
新登場のアバルト500eは末尾のアルファベットeが示す通りのフルEV。そしてもちろん、フィアット500eのアバルト版である。ちなみに500eの読み方はゴヒャクイーではなくチンクェチェントイーだ。 【写真】試乗車アバルト500eの写真を見る (43枚) フィアット500eの最高出力が118psであるのに対し、アバルトは155psだ。一方床下に搭載されているリチウムイオンバッテリーの容量はフィアットもアバルトも42kWhで同じ。結果的にWLTCモードで比べると、フィアット500eが335km走るのに対し、アバルト500eは303kmと1割ほど減ってしまう。 とはいえ最高出力が約3割増しなのだから「得している?」と言えなくもない「電動サソリ」なのである。 数値的な理屈っぽい話から入ってみたが、アバルト500eの白眉は言わずもがな、一目でアバルトだ! とわかるその見た目にある。今回の試乗車はアバルト500eのテーマカラーの中で最もインパクトが強いアシッドグリーンに塗られていた。それ以外の3色アンチドーテホワイト/ベノムブラック/アドレナリンレッドも存在感強めのカラーリングであり、アバルト500の存在感を後押ししている。 またフィアットの場合フロントマスク中央に500の文字が入るが、アバルト500eはABARTHと掲げられているので間違いようがないのもいい。それ以外にもフロントバンパー/ホイール/エンブレム類などがアバルト専用装備として独特のオーラを放っている。
電動サソリのバツとマル
言ってもフィアット500eのパワフルなやつ程度に思っていたのだが、最初の加速で面食らってしまった。うるさい! というか聞きなれたレコードモンツァマフラー風の排気音が鳴り響くのだ。 静かすぎるのはマズいということでEVが音を追加することは珍しくないが、アバルトのそれは完全に作為的。サウンドジェネレーターと呼ばれるシステムはリアフェンダーの内側あたりから音をまき散らしているらしい。 この音は賛否両論あるだろう。さっそく音を消すスイッチを探してみると、それがメーター内のオンボードコンピューターの深い階層にしまわれ、容易にオンオフできないようになっていた。簡単に物理スイッチでオンオフできるなら、アバルトらしい音もありだとは思うのだが…… アバルト500eは155psというスペックから想像される以上に加速が鋭いし、引き締まったサスペンションも負けていない。だが今回なにより感心させられたのは、EVなのにEV臭さがないということかもしれない。EVのドライブフィールを象徴する床下バッテリーの重ったるさが感じられないのだ。 硬いサスと床下バッテリーの重さ、そして4輪のディメンジョンが絶妙なのか、姿勢変化は最小限に抑えられているが、すっきりとして違和感がない。EVである前にアバルトありき。音はともかく、動力源が電気になってもサソリは健在。その完成度は高いと感じた。