大河ドラマ「光る君へ」最終回（第48話）。源倫子（黒木華）はまひろの“告白”に…（C）NHK

　◇「光る君へ」チーフ演出・中島由貴監督インタビュー 　脚本家の大石静氏（73）と女優の吉高由里子（36）が3回目のタッグを組んだNHK大河ドラマ「光る君へ」（日曜後8・00）は15日、15分拡大で最終回（第48回）が放送され、完結した。「源氏物語」の作者・まひろ／紫式部と源倫子（黒木華）の“ラストバトル”、時の最高権力者・藤原道長（柄本佑）の最期、そして、まひろの再びの旅立ち…。チーフ演出を務めた中島由貴監督に撮影の舞台裏を聞いた。 【写真】柄本道長の衝撃の頬。最終回、万寿4年（1027年）、藤原道長（柄本佑）は最期の時を迎え… 　＜※以下、ネタバレ有＞ 　「ふたりっ子」「セカンドバージン」「大恋愛～僕を忘れる君と」などの名作を生み続ける“ラブストーリーの名手”大石氏がオリジナル脚本を手掛けた大河ドラマ63作目。千年の時を超えるベストセラー「源氏物語」を紡いだ女流作家・紫式部の波乱の生涯を描く。大石氏は2006年「功名が辻」以来2回目の大河脚本。吉高は08年「篤姫」以来2回目の大河出演、初主演となった。 　最終回は「物語の先に」。まひろは「刀伊の入寇」に巻き込まれたものの、寛仁4年（1020年）、大宰府から都に生還した。土御門殿を訪れ、藤原彰子（見上愛）への報告を終えると、道長とバッタリ再会。言葉もないまま見つめ合っていると、倫子に呼ばれ、その場を離れる。 　倫子は「それで、あなたと殿はいつからなの？私が気づいていないとでも思っていた？」――。まひろは約40年にわたる道長との“特別な絆”を打ち明けた。 　倫子「まひろさん、殿の妾になっていただけない？そうしたら殿も、少しは力がお付きになると思うのよ。どうかしら。いつ頃から、そういう仲になったの？」 　まひろ「初めてお目にかかったのは、9つの時でした」「道長様と私が、親しくしていた散楽の者が、殺されて、2人で葬って。道長様も私も、悲しみを分かち合えるのは、お互いしかいなかったのです」 　倫子「（立ち上がり）彰子（見上愛）は知っているの？あなたは、どういう気持ちであの子のそばにいたの？何も知らずに、あの子はあなたに心を開いていたのね。あなたは本心を隠したまま、あの子の心に分け入り、私からあの子を奪っていったのね。私たち、あなたの手のひらの上で転がされていたのかしら」 　まひろ「そのようなことは」 　倫子「それですべて、隠し事はもうないかしら？」 　まひろ「はい」 　倫子「このことは死ぬまで、胸にしまったまま生きてください」 　まひろ「はい」 　今作最大のヤマ場の一つ。中島監督は「夫に対して思うところはあっても、正妻として自分の胸に納めてきたのが倫子という女性。でも、道長とまひろの間には、自分が絶対に分かち合えない時間や思いがあることを知って、いつも毅然としていたあの倫子が初めて動揺をあらわにしてしまいました。まひろも悲しい過去を抱えてきましたけど、ここは倫子が傷つくシーン。なので、私としては、まひろには悲劇的に語ってほしくない。かといって、倫子もまひろの前で泣き崩れたりするわけにはいかない。そんなギリギリの対峙は黒木さんと吉高さん、お二人だからこそ体現できたんだと思います」と述懐。 　まひろに妾になることを提案した倫子だが「道長のお手つきなら別に構わないし、いっそ妾になってもらった方が面倒くさくないし、自分の気持ちも楽だし、あの人にとってもそれがいいなら、ということで割り切って持ち掛けたら、予想もしなかった2人の歴史が分かってしまって。自分の手が絶対に届かないものを2人は共有しているんだな、と。流石の倫子もショックですよね」。妾の提案までの倫子にはまだ余裕があり「顔に日が当たる方向から撮っています。まひろの告白で局面が変わった後は、倫子の顔が影で暗くなるように反対側からカメラを向けました」と細部にわたる演出も明かした。 　「なかなか表に出ない、人間の内にある感情があらわになる瞬間を捉えたい」「1つの台詞の中でも、表と内の感情が複雑に絡み合っているので、多層的な芝居になるようにしたい」が中島監督の基本方針。 　「最終的には芝居勝負のシーンなので、カメラワークよりも顔のアップを重視、多用して組み立てました。お二人とも大きな演技はしていないですけど、感情の微妙な揺れ動きが伝わる凄い表情で。泰然自若の倫子も、まひろに娘を奪われていたことに気づいて、それを口にした時は、ポーカーフェイスではいられない。彰子の入内をめぐって道長に対して感情的になったこともありましたけど（第26回、6月30日）、その時とはまた違う母としての悲しみに襲われながらも、ギリギリのところで持ち堪える姿は、今までにない倫子ですよね。黒木さんが最後に創り上げてくれました」 　「吉高さんも倫子を傷つけるのを承知で告白した時と、彰子の名前を出された時の表情の変化、倫子だけでなく彰子にも酷いことをしてしまったのだ、とハッとしながらも小さく『はい』と答えるしかない、何とも言えない表情にうっすら敗北感がにじみ出ていて、素晴らしかった。静かで緊張感ある2人のシーンを演出できて幸せでした」 　「偏つぎ」で遊んだ永観2年（984年）（第3回、1月21日）の初対面から36年。静かに火花を散らした“両雄”を称えた。