テレ朝・ANNnewsCH、コロナ禍やガザ侵攻で感じた「報道」と「YouTube」の親和性
■コロナ禍の異変を伝えた渋谷の映像 ――ほかにライブ配信の強みを感じたことはありますか。 佐藤:コロナ禍が始まった頃、東京の街から人影が消えましたよね。テレビ朝日では、渋谷のスクランブル交差点にカメラを設置していて、本来は人がたくさんいることを伝えるニュースで活用されているのですが、緊急事態宣言で誰もいなくなった渋谷をライブ配信していたら、ものすごく視聴されて。 ――「映像の中に情報がない」ことで、逆にニュース性が高くなったと。 佐藤:「コロナによって世の中に異変が起きている」と言葉で伝えるよりも、1時間ぶっ通しで渋谷を見て、タクシーが5台しか通らないとか、横断歩道が何回青になっても誰も渡らないとか、昼間なのに渋谷のスクランブル交差点を誰も歩いてない非日常感が、コロナの脅威を感じることにつながったんじゃないかと。地上波だったら「渋谷から人影が消えました」というナレーションで紹介されるような5秒ぐらいのカットになっていたと思いますが、ライブ配信で長く見せることで、インパクトを与える映像になったんだと感じます。
■“チェック体制”もテレビ局のインフラの一つ ――今後伸ばしていきたい点は。 山野:今お話ししたライブ配信、そして双方向性です。鋭いコメントや的確なコメントが寄せられることで視聴者同士も、私たちも学びになりますし、動画を見て生まれた疑問や要望に私たちがどう応えられるのか、まだまだ課題が多いです。炎上を恐れるがあまり何も反応しないというのも、YouTubeの特性を捨ててしまうことになるので、炎上リスクや、誰かを傷つけることにならないかという視点を常に持ちつつ、双方向性を活かせる取り組みを増やしていきたいです。私たちとしても、地上波の番組だと、視聴者センターに感想が届くまで時差があるので、リアルタイムで声が聞こえるやりがいは大きく、的確なコメントにはお礼を申し上げることもあります。 ――今、どれだけ気をつけて正しい情報を発信しても、何が炎上や誹謗中傷の火種になるか分からないという難しい時代だと思いますが、工夫していることはありますか。 山野:地上波の放送も同じですが、「これを世に出したらどんなリアクションが起きるか」ということは絶えず考え続けています。映像を流す前も二重、三重のチェックをしていて、そのことで世に出すタイミングが遅くなってしまうこともありますが、絶対に必要なプロセスだと思っています。しっかりとしたチェック体制があることも、いわばテレビ局のインフラの一つ。早ければいいというものではないので、きちんとやっていきます。また、生成AIなどもかなり完成度が高くなってきているので、取り扱う情報が本当に正しいものなのか、今まで以上に厳しく裏を取って確認していかなければなりません。 ――地上波の番組と同じ体制でチェックされているんですね。 山野:また、地上波で放送したものはすでにチェック済みの映像ですが、タイトルやサムネイル画像を新たに設定することになるので、再度チェックして配信しています。 佐藤:地上波では問題にならなくても、ネットだからこそ炎上してしまうことがあるという視点も忘れないようにしています。 ――ありがとうございました。今後の『ANNnewsCH』の展開も楽しみにしています。
八木ひろか