【インタビュー】巨人・戸郷翔征 新世代の旗手「“ジャイアンツのエース”は、どんなときでも、どんな相手でも、勝つことで初めて称賛されるもの」
奪三振の意味
戸郷翔征[投手/24歳]
【エース継承 ジャイアンツ魂、託されたバトン】 新たな“ジャイアンツのエース”はこの男しかいない。高卒6年目、24歳のシーズンながら、自身初の開幕投手を務めて責任感を深めると、3年連続12勝をマークしてリーグ優勝に貢献。MLBへ旅立つ先達からも後継者に指名された。近い将来、その背中に『18』が躍ることになるはずだ。 取材・構成=杉浦多夢 写真=兼村竜介、BBM ※年齢は2024年の満年齢 昨年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では世界一の歓喜に酔いしれたものの、浴びたのはシャンパン。前回リーグ優勝の2020年は新型コロナ禍にあってビールかけは開催されず、初めて優勝を経験した19年はまだ19歳で、1人、炭酸水のシャワーを浴びた。5年越しとなる念願の“ビール”かけが至福の時だったのは、新たなエースという立場で1年間、投手陣の先頭に立ってチームをけん引することができたという手応えがあったから。スライダーに磨きをかけることで自慢のフォークはさらに冴えわたり、三振からの逆算で組み立てる投球面でも確かな進化を実感していた。 ──今季は3年連続で12勝、2年ぶり2度目の最多奪三振のタイトルも獲得してチームをリーグ優勝に導きました。 戸郷 去年の自分の勝ち星を上回れなかったですし、負けの数でも少し多くなったので(昨季5敗→今季8敗)、悔しいシーズンでもありました。ただチームとしても優勝することができましたし、奪三振のタイトルは2回目ですけど、すごく光栄な賞です。僕の中で三振は大きなバロメーターなので、そのタイトルが獲れたことはうれしかったなと思います。 ──その過程で、5月24日の阪神戦(甲子園)では史上89人目、101度目のノーヒットノーランも達成しました。 戸郷 なかなか体験することができないことを達成したということも、僕の野球人生としてもひとつランクが上がったかなと思いますし、本当にいい瞬間だったなと今でも思います。 ──シーズン終盤の優勝争いの緊張感というのは、また違ったものでしたか。 戸郷 チームとしても4年ぶりの優勝でしたし、4年前とは僕自身も立場が変わって、1年間しっかり働いての優勝だったので。そこはうれしかったですね。前回(2020年)はビールかけがなくて、その前(19年)はまだ19歳だったので参加できず、僕だけが炭酸水でしたし、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)のときはシャンパンだったので。今回のビールかけというのはまたひと味違った味でしたし、チームのみんなと体験できたというのはよかったです。 ──投球内容で言うと、シーズン半ばには「スライダーをうまく使う方法」を考えていると話していました。 戸郷 スライダーの精度が上がったことで、三振というのも多少は取れましたし、投球の幅がそれだけ広がったのかなというのはあります。曲がり幅もそうですし、打者が少しは嫌がる球になってくれたので。フォークに、対にまではならないんですけど、もうひとつ球種がバッターの頭にあるだけで、全然違うボールになってるのかなと思います。ただ、まだ大きく曲げるとか、小さく曲げるとか、そこまでの感覚はないので、スライダーの中でバリエーションは出せていないですけど・・・
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週刊ベースボール