【柴咲コウの生活は生き方の理想?】あなたは“こっち側”の人間か?“あっち側”の人間か?
人気連載「齋藤薫の美容自身 STAGE2」。今月のテーマは「あなたは“こっち側”の人間か?“あっち側”の人間か?」。今回は、後編をお届け。
森の中の一人暮らし、柴咲コウの生活は“こっち側”の生き方の理想?
たとえば、北海道の森に一軒家を建て、一人暮らしをしている柴咲コウの生活を見て、何だか心が洗われるように穏やかになったという人がいるはずだ。「これは、寂しい孤独ではない、豊かで甘美な孤独……」そう語る柴崎コウの精神性に憧れを持った人がいるのだろう。 10代で芸能界デビューし、女優や歌手として活躍を続ける中で、自然への想いが募り、ある種の罪悪感を感じるようになったという。何かを買うとゴミまでついてくる、それを自然に還元できないことも含め、このままでいいのだろうかと。そこで「衣・食・住」をテーマとしたブランドを自ら立ち上げ、プレオーガニックコットン製の衣類や、化学調味料不使用のレトルト食品などを販売、環境省の環境特別広報大使に任命されるなど、自然と関わる新しい生き方を始めている。 そしてこの人もずばり“こっち側”の人。自らを“人見知り”と言い、アクションを起こすのが苦手、相手の様子をうかがってしまうタイプ、だから共演者と打ち解けるのに時間がかかるという。 そんな自分の魂と向き合うために森の一人暮らしを始めたということなのだろうが、一方で、この人のウィキペディアに記された“親交のある人”の数がやたらに多い。それこそ共演した多くの人と深い親交を持っていることがわかるのだ。つまり人見知りではあるけれど、そして“こっち側”の人ではあるけれど、その分だけ人と丁寧に向き合い、深い絆をつくっていく、ちょうど自然とも深く関わっていくように。何かこの人の生き方が、“こっち側”の人間の一つの理想のように思えてくる。 また水卜麻美アナは、中村倫也との結婚で“今日の出来事を話せる人が初めてできたこと”をやんわり認めたが、“こっち側”の人間はパートナーを得ることで、心おきなく自分を出せるオアシスを得るのだ。そういう意味で、意外に結婚が早いか、逆によほどのことがない限り結婚しないか、どちらかに偏りがちな傾向があるとも言える。 要はそういうことも含め、“こっち側”ならではの生き方がある。それを知ると、多少の生き辛さも孤独も、何もかもどこか神聖なものに思えてくる。まさに柴咲コウのように、豊かに甘美に自分を研ぎすませる生き方もできるわけで、“こっち側”の人間も悪くはない。いや全然悪くないと思えてくるはずなのだ。 “あっち側”の人間は、いつもキラキラと自分を外に向けてアピールができ、“こっち側”の人間からしたら「おめでとうございます!」と讃えたくなるほど祝祭的な人生を送れるわけで、もちろんこれはうらやましい。ただそれぞれの居場所があるのだということ、きちんと整理して知っておくべきなのだろう。人生には、2種類の哲学があるのだと。そして想像以上に多くの人が“こっち側”であることにも早く気づくべき。それだけで疎外感が減って、楽に生きられる。自分は特殊ではなく、実は自分の理解者が世の中にたくさんいる事実を知ることが、疲れを癒やしてくれるとわかるはずだから。 さぁ、あなたは“こっち側”だろうか、“あっち側”だろうか。“こっち側”の人間に「おかえり」と言ってくれるあの番組、再開してほしいと切に願っている人が少なくないこと、お伝えしておこう。 皆が皆、意見をぶつけ合ったらまとまらない。皆が自信満々に承認欲求に走ったら、受け止める人がいない。“こっち側”の人はたぶんそこまで考えて、“こっち側”の人をやっていて、自信のない“いたいけな人間”ではないのだ。 撮影/戸田嘉昭 スタイリング/細田宏美 構成/寺田奈巳 Edited by 中田 優子
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