白タクだって「闇バイト」、中国人らSNSで募集…インバウンド需要に「小遣い稼ぎの軽い感覚」で
捜査関係者によると、中国人やベトナム人の白タクグループがあり、博多港と県内観光地の間で送迎するほか、福岡空港から数日かけて九州を巡るようなケースもある。役割の「分業」やその都度集まる理由について、捜査幹部は「1人で全て担ったり、同じメンバーで繰り返したりするよりも、空いている人を募る方が客の要望と調整しやすいのではないか」と指摘。「観光客にとっては母国語を話せる運転手兼ガイドが付く。応募する側も車貸しや運転だけで小遣いが入り、メリットがある」とみる。
「友達迎えに来ただけ」
中国の建国記念日にあたる国慶節の休暇期間(10月1~7日)だった4日、福岡市の福岡空港国際線。30分無料の駐車場には、白ナンバーのワンボックスカーが十数台並んでいた。
多くの外国人客が送迎場所で列をなすなか、若い男性が高齢男女に中国語で声をかけ、駐車場の「久留米」ナンバー車へ案内した。記者が「タクシーですか」と男性に尋ねると、片言の日本語で「友達を迎えに来ただけ」と答えた。
博多港でも3日と4日、タクシー乗り場の行列を横目に、白ナンバー車に乗り込む外国人客の姿がみられた。男性タクシー運転手(67)は「明らかに初対面の様子で客を手招きし、車に乗せている。客を奪われ、バカにされていると感じる」と憤りを口にした。
コロナ禍で一時落ち着いた白タクは再び増えている。福岡県警によると、白タクに関する情報提供は2021年は8件、22年は12件だったが、23年は29件、今年は9月末ですでに22件に上っている。一方、摘発には金銭授受の確認が必要だが、事前のクレジットカード決済の場合は困難になり、「友人や家族の送迎」などと主張されると、それ以上の捜査が難しいという。
国土交通省九州運輸局によると、白タクは運転技術が未熟で保険未加入のため、利用者に危険や不利益が生じる恐れがある。一方、海外では自家用車で有償送迎するライドシェアが広がっており、中国では16年に合法化された。今年4月に導入された日本ではタクシー事業者の管理下で運行する必要があり、白タクは現在も違法だが、軽視する外国人が目立つという。
今年1~6月の九州への外国人入国者数は249万792人で前年同期比で85%増え、過去最高だったコロナ禍前の18年と同水準に戻った。同局は中国の春節(旧正月)や国慶節の休暇に合わせ、白タクの違法性を中国語や英語で訴えるチラシを港や駅で外国人らに配布している。担当者は「全国的に増加傾向にあり、警察と情報共有して防止に取り組む」としている。