「一緒に寝入ってしまい、起きたら息子の体は冷たく死後硬直が…」 原因不明の“乳幼児突然死症候群” 遺族の苦しみ、必要なケアは
遺族を悩ませる問題として、夫婦間で悲しみ方に違いが出ることがあるという。中には離婚に至ったり、父親に泣ける場所がなかったりする。次の子を持つ気になれず、もし生まれてもフラッシュバックに悩んだり、他の子を見て「なぜうちの子が」と苦しむことも。周囲から「悲しいだろうけど、次の子を作って忘れなさい」と言われたり、無理に話題を避けられて存在がなかったことにされたり、正しく認知されていないために「不注意」という心無い言葉が投げかけられることもある。 ぬりちゃんさんも「夫婦間で悲しみに違いがあった」と振り返る。「当時の夫は単身赴任をしていて、息子と接したのは2週間ほど。悲しみの度合いで溝ができ、半年後に離婚に至った」。しかし、「今思えば、同じく子を失った夫に酷だった」「離婚したため、同じお墓に入れない」と考えている。
悠吾くんを亡くしてから4年半が経ち、「亡くなって1~2年は自分を責める時があったが、今はだいぶ落ち着いてきている」と語る。「新しい方と再婚して、第2子を産んで、59日を超えて生かせられていることに安堵している。今の夫も、亡くなった子を自分の子どものように言ってくれる。今回SIDSのリアルを話せる機会をもらってよかった」。
■専門医「3つのリスクはわかっているが、原因ではない。当事者を責めないで」
こども家庭庁の資料によると、1997年に538件発生していたSIDSは、2002年に285件、2007年に158件、2012年に152件、2017年に77件、2022年に47件と、発生件数は年々減少している。 小児科医・新生児科医の今西洋介氏は背景として、「アメリカや世界でも同様の傾向がある。1970~80年代は、消化や寝付きの良さから『うつぶせが良い』と言われていた。しかし突然死が多いと気づいて、やめるよう20年間訴えて、減少した。SIDSは旧約聖書にも書かれているもの。医療のレベルは違うが、原因不明の突然死は昔からある」と説明する。 SIDSの予防方法は確立していないながら、こども家庭庁は「1歳になるまでは、寝かせる時はあおむけに」「できるだけ母乳で育てましょう」「たばこをやめましょう」の3点で発症率が低くなるデータがあるとし、「睡眠中の赤ちゃんの死亡を減らしましょう」と呼びかけている。 今西氏は「原因はわからないが、リスクを上げる要因はわかってきている。ただ、あくまでも全員ではないことには留意が必要。『こういうことをしたから、突然死したんだ』と、周囲が当事者を責めないことが大事だ」と警鐘を鳴らす。