バス旅に現れた新リーダー高木菜那 アスリート魂が光るガチ企画
なぜか、ロケ番組を好んで見るようになった。テレビ朝日「帰れマンデー見っけ隊!」やTBS「バナナマンのせっかくグルメ!」は、日本各地の観光名所や美味(おい)しいもの情報、さらに地元の人とのふれあいなど、特別に「これ!」という内容はないのだが、見ていてホッとできるのがいい。 そんなロケ番組の中でも長く愛されているのが、テレビ東京「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」シリーズと、その派生番組だろう。元祖は太川陽介&蛭子能収コンビで、2007年10月に初登場した。不定期ながら年2、3度のペースで放送され、ゴールをひたすら目指す太川と、途中でパチンコ店やボートレース場を見かけるとついつい誘惑される蛭子のポンコツぶりが楽しかった。 バスがつながらない場合は歩くしかないのが番組ルール。山道だろうが、雨が降ろうが、夏の猛暑だろうが、とにかく歩く。過酷なロケに蛭子が年齢的にキツくなり、17年1月放送分を最後に引退。その後、田中要次(俳優)と羽田圭介(作家)による「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z」にバトンタッチされたが、決められた時間内にゴールできない失敗が続き、22年8月放送分を最後にコンビ解散に追い込まれる。 そして第3シリーズとして23年7月に放送されたのが「ローカル路線バス乗り継ぎの旅W」。出演者3人がいずれも女性という新鮮味があった。1、2作は赤江珠緒と三船美佳がメインだったが、3作目で高木菜那が登場。スピードスケートで五輪に出場し、金メダルに輝いた。よくあるアスリート枠のゲストかと思っていたら、明るいキャラクターと持ち前の体力・精神力を発揮し、いきなり欠かせない存在になった。 前述したように、何時間も歩いたり、時には走らなきゃならない場合も。出演者が体力勝負を求められるようになった。 今年12月4日に放送された「ローカル路線バスVS鉄道乗り継ぎ旅 第22弾」では、鏡優翔(レスリング)と迫田さおり(バレーボール)という2人の五輪メダリストが登場。太川陽介率いるバスチームVS村井美樹率いる鉄道チームの対抗戦なので、ともに「負けたくない」というライバル意識がバチバチ。「鬼軍曹」の異名を取る村井はゲストにも長距離の歩きや走りを要求するが、迫田はしっかりと応えてみせた。電車の時間に間に合わせるため、村井と迫田は必死で走った。あまりのガチ対決、ゴール地点で負けを知った迫田は悔し涙さえ見せた。 「W」第4弾(ことし10月放送)で、高木はリーダーに就任。ゲスト(村上茉愛、ハシヤスメ・アツコ)とともに、姫路城(兵庫県)から松山城(愛媛県)までバス24本を乗り継ぎ、途中37キロを歩いてゴール。「バス旅」のエースとしての貫禄さえついた。 番組にはハプニングが付きもので、せっかくバス停を見つけても、最終便が出た後でがっかり、というケースは何度もあった。心が折れそうになりながら、長距離を歩くのはいつものこと。そんな状況だから、ロケ番組の出演者は「素」が視聴者にもよく伝わるのだ。高木はこれまでの番組で視聴者のハートをしっかりとつかんだ。 今月28、29日放送の「テレ東系旅の日~ローカル路線バス乗り継ぎの旅8時間SP~」では、バス旅の歴史を切り開いた太川陽介と、新リーダー高木菜那が初共演。2人のチームがリレーしながら、千葉県・成田山新勝寺から青森県の龍飛岬を目指す。年末の楽しみが、ひとつ増えた。【三宅敏】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)