前代未聞の「ポスト岸田」10人以上が乱立…総裁選に立候補者が続出している「本当の理由」
名乗りを上げるだけでメリットが
9月12日告示・27日投開票の自民党総裁選には、約10名が出馬に意欲を見せている。立候補には20名の推薦人が必要なため、出馬できるのはその半数ほどになるだろうが、激戦になることは間違いない。 【一覧】「次の総選挙」で落選する「裏ガネ議員」の全実名…! 理由のひとつとして、「政治とカネ」問題が勃発したことをきっかけに、派閥による縛りが弱くなったことが挙げられる。その例が小林鷹之前経済安全保障担当大臣の出馬表明だろう。8月19日に開かれた会見には、24名の衆参両院議員が出席した。 小林氏は2012年初当選で、当選4回の49歳。同期の福田達夫元総務会長や武部新衆院議員らが、がっちりとその脇を固めている。全国的にはまだ知名度が低いことが課題だが、今後メディアでの露出が増えれば、それも解消するだろう。何よりの強味は、「若い挑戦者」であることだ。たとえ今回の総裁選で負けても、傷にはならなず、むしろ「総裁選候補」としての箔が付く可能性が高い。 同じ旧派閥から複数の候補が出馬を模索していることも、今回の総裁選の特徴だろう。旧平成研からは茂木敏充幹事長と加藤勝信元官房長官が出馬に向けての準備を行い、解散予定の宏池会からは岸田文雄首相の後継者と目される林芳正官房長官に加えて、上川陽子外務大臣が意欲を見せている。 来年7月には参議院選が予定され、10月までに衆議院選が行われることになっている以上、次期総裁はなによりもまず「選挙の顔」であることが条件となる。しかも岸田政権の退陣後に誕生する新政権は、その時に上昇する「ご祝儀支持率」でもって衆議院を解散する必要に迫られる。
「2・3位連合」のウワサ
そういう意味では各世論調査で常に上位を占める石破茂元幹事長や小泉進次郎元環境大臣、河野太郎デジタル大臣や高市早苗経済安全保障担当大臣が有利になるが、これだけ多数の候補が乱立する模様の今回の総裁選では、1回目の投開票で結果が決まらず、決選投票になる可能性は高い。すでに永田町では「2・3位連合」の話が囁かれている。 「2・3位連合」とは、岸信介元首相、石橋湛山元首相、石井光次郎元衆院議長の3人が争った1956年の自民党総裁選で、1回目の投票で2位だった石橋氏が1位の岸を2回目の投票で下したことを指す。3人の中で優位の岸が1回目の投票で過半数を取らないと見据えた石橋陣営と石井陣営が、事前に「3位の陣営が2位の陣営を応援する」と約束。決選投票で石橋氏が258票を獲得し、わずか7票差で岸氏を破った。 石橋首相の体調悪化で、石橋政権は2か月ほどで終わったが、石橋政権の誕生に貢献した三木武夫元首相は幹事長に就任し、後に首相に就任する足掛かりとした。また石橋内閣で大蔵大臣に就任した池田勇人元首相は、「1000億円施策、1000億円減税」の積極財政を提唱。日本の高度経済成長を実現させる基礎を築き、池田政権で実施する「所得倍増計画」に繋げた。 2012年9月の総裁選でも、「逆転劇」が発生した。1回目の投票で、石破茂元幹事長は議員票こそ34票にとどまったものの、党員算定票(300票)で過半数の165票を獲得し、一躍トップに躍り出た。しかし議員票のみとなった決選投票で、町村派(当時)などから票を集めた安倍晋三元首相に敗退した。 そして安倍総裁(当時)は、石破氏を党幹事長に任命した。2度目の投票で安倍氏には54票の議員票が新たに加わったが、石破氏に加わった議員票は55票で、わずか1票差であるが安倍氏が獲得した追加の議員票よりも多かった。そうした状況で党内融和を図るためには、牽制の意味も含めて石破氏をそれなりのポストで遇する必要があったわけだ。