ロケット・ゼロ開発「打ち上げ費用で競争力、小型衛星をターゲットにした小型ロケットに特化」…インターステラテクノロジズ・稲川貴大代表取締役CEO
インターステラテクノロジズは、北海道大樹町で小型ロケットの開発から打ち上げまでを手がけている。2019年には、国内の民間企業で初めて、単独開発したロケットが宇宙空間に到達した。コストがかからず、発射の頻度が高いロケットを目指して開発を続けている。稲川貴大代表取締役CEO(最高経営責任者)に話を聞いた。(聞き手・バッティー・アイシャ)
8億円以下目指す
――小型人工衛星打ち上げロケット「ゼロ」の開発に力を入れている。
「ゼロは全長32メートルで、打ち上げ費用は量産段階で8億円以下を目指している。競争力のある価格設定が強みだ。燃料は、北海道十勝地方の牛のふん尿から製造した液化バイオメタン(LBM)を使っており、環境にもやさしい。できるだけ早く、大樹町で打ち上げるために開発を急いでいる。
技術的には、LBMを使ったエンジン燃焼器の燃焼試験に成功した。エンジンの心臓部になる、ターボポンプの性能を確かめる試験も終わっている。こうした単体の試験を行っている最中で、今後はいろんな部品を集めた統合試験を行い、最終的にロケットを打ち上げるというステップで進めていく。
事業面では、イタリアで人工衛星の物流サービスを手がける新興企業『D―Orbit』社と包括契約を結んだ。グローバルに展開する足がかりになると思っている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)とも協定を結び、衛星を打ち上げる時にロケットの使用で優先的に契約を結ぶ事業者の一つに選ばれた。この1年で官民の顧客開拓が進み、大きな進展があった。
国からのサポートもある。文部科学省が宇宙関連のスタートアップ(新興企業)の経費を補助するSBIR制度に採択された。昨年の20億円に続き、今年は約46億円の交付が決まったところだ。これまでの実績を評価してもらえた。この資金でゼロの初号機打ち上げに向け、開発を進めていきたい」
大樹町、世界有数の打ち上げ拠点
――グローバルに戦う上での強みは何か。
「近年の市場拡大をけん引する、小型の衛星をターゲットにした小型ロケットに特化している点だ。