前ヤクルト田中が横浜DeNAへ、前ソフトバンク細川は楽天へ移籍濃厚
プロ野球の12球団合同トライアウトが12日、甲子園球場で行われ、投手42人、野手23人の計65人が参加したが、行き先が決まったのは、その中に姿のないトライアウト不参加組だった。ヤクルトから戦力外通告された田中浩康内野手(34)の横浜DeNA移籍が決定的となり、同じくソフトバンクを戦力外になった細川亨捕手(36)を楽天が獲得する方向が強くなった。 前ヤクルトの田中は戦力外通告と同時にコーチ転身を打診されたが、現役続行を強く主張。当初、トライアウト参加を予定していた。だが、二塁を含めた内野の層を厚くしておきたい横浜DeNAが、田中に白羽の矢を立てたため、トライアウト参加を取りやめたと見られる。 今季は、二塁を石川雄洋(29)、エリアン、宮崎敏郎(27)らが主に守ったが、石川は肘に不安もあり、ローテーションで起用しなければならないように固定ができず、チームのウイークポイントのひとつだった。エリアンが残留、山崎憲晴(29)が故障から治ってくるが、田中の経験と犠打を含めた小技を使える部分が評価されたようだ。 田中は、2005年に早大から自由枠でヤクルトへ入団。2007年から二塁のレギュラーとなりベストナインに2度選ばれ、キャプテンに抜擢されるなど活躍した。しかし山田哲人の台頭で居場所をなくし、昨オフに海外FAを行使して残留したが、今季はスタメン2試合を含む、わずか31試合出場、打率.188に低迷、7月後半以降1軍出場はなかった。 またソフトバンクのV3に貢献。怪我を隠しながらクライマックスシリーズでもマスクをかぶったベテラン捕手の細川も、チームからのコーチ打診を蹴って現役に固執。細川の経験と能力が、今季、嶋基宏(31)が故障した際にチームのウイークポイントを露呈した楽天の補強ポイントと一致した。今季は49試合に出場、打率.226、1本、6打点に終わっていたが、勝負強さには定評があり、嶋との併用で層が厚くなる。細川のインサイドワークが若手捕手育成の手本ともなり、東北の青森出身の細川は、楽天のチームコンセプトとも重なる。またFA交渉をスタートさせた西武の岸孝之(31)と、西武時代にバッテリーを組んでいたこともあり、今オフ強力補強に乗り出している楽天が細川獲得にターゲットを絞った。 また楽天から戦力外となった岩崎達郎(31)も、トライアウトに不参加。古巣の中日にスーパーサブ的な守備固め要因として出戻ることが濃厚になっている。 「有力選手はトライアウトに参加せずに決まる」という傾向が強いが、この日、トライアウト会場で某球団の編成担当者にこんな話を聞いた。 「僕たちは、シーズン中に余剰戦力のいいとき、わるいときを含めてゲームの中で徹底して調査している。トライアウトの数少ない打席や投球を見て決める評価よりそのデータが確実だし、逆にその調査を元に“使える”と踏んだ選手には、“トライアウトには出るな”と声をかける。その気のなかった他のチームに接触されたら嫌だからね。だから有力選手で、ここに来ない選手はもう決まってるんだよ」 先に“唾”をつけられる選手は、当然、トライアウト不参加となるが、トライアウト当日に、それが明るみに出てしまうのも、なんとも皮肉な現象かもしれない。