「トリー バーチ」がスポーツのエッセンスから得た“強さ”
「トリー バーチ(TORY BURCH)」がニューヨーク・ファッション・ウィーク(現地時間9月6~11日)で2025年春夏コレクションを発表した。全38体のルックに散りばめられたのは、スポーツのエッセンス。お家芸であるドラマチックな色使いやプリントデザインはやや抑えめな印象だったものの、「トリー バーチ」らしいエレガンスにスポーティー要素が融合し、女性らしい芯の強さをもたらした。
表層のデザインにとどまらない
スポーツエッセンスの解釈
スパンコールの刺しゅうを全面にあしらったスイムスーツや、ブルーやオレンジなどビビッドなカラーブロッキングのセーター。水泳を想起するような波打つジャカード柄のトップスに、ストレッチが効いたウールガーゼやナイロンなどの素材使いも見られた。
スポーツエッセンスの落とし込みは、表層のデザインだけにとどまらない。特に、「締める」「緩める」のメリハリが際立った。モデルの身体に緩やかにフィットするノースリーブのキルティングトップスには、用尺たっぷりで波のように揺れ動くナイロン×ビスコース素材のスカートを合わせる。身体にピタッと沿うニットポロシャツには、テーラードジャケットを重ね、その上からベルトを締めてボディーコンシャスに見せた。
フォームの緩急で躍動感
モデルがランウエイを歩く際の動作まで、緻密に計算した上でのデザインであることがうかがえた。ファーストルックを含め多用していたのがウエストにワイヤーを仕込んだスカートだ。モデルの歩調に合わせてウエスト部分が無造作にずれ動き、エフォートレスな雰囲気を演出する。フォームの緩急が、コレクション全体に躍動感をもたらしていた。
来場者の元には、今季のコレクションの方向性を示すカードが配布され、デザイナーのトリー・バーチからのコメントが記されていた。彼女曰く、「力強さと優雅さ、正確さと自由というスポーツの本質から始まり、動作とフォルムのシンクロニシティーを表現した」。
服そのもののデザインを超え、身体の動作と服のシルエットの関係性、つまり“服を纏う”ことのデザインを試みたことが読み取れる。スポーツのフィルターを通じて完成させたコレクションは、女性的な“強さ”を醸した。それは、例えばジャケットの肩をいからせることで生まれるようなマスキュリンな強さとはまた違う、「トリー バーチ」らしいエレガンスとしたたかさの共存を感じさせた。