ふるさと納税ブームを静観する東京都「応益原則に反する」
趣向を凝らした返礼品が話題になるなど盛り上がりを見せる「ふるさと納税」。2008年に改正された地方税法によって、個人住民税の寄付金税制が拡充されたことから始まったとされています。名称に“ふるさと”を冠していることから、出身地や実家のある自治体にしか納税できないと勘違いされがちですが、居住の有無は関係ありません。それどころか行ったことがない自治体でも「納税」することが可能です。そもそも、納税と銘打っていますが、法的には寄付金にあたります。こうした、ふるさと納税ブームの中、一貫してこの制度に反対の立場を取っているのが東京都です。 <ふるさと納税>北海道でトップの上士幌町 小さな町が人気の理由は?
東日本大震災きっかけに注目
創設された当初、ふるさと納税は一般的に注目されていませんでした。しかし昨年度の納税総額は130億円、納税者数は10万6000人にまで達しています。注目されるきっかけになったのは、2011年の東日本大震災です。被災した東北3県の力になりたいと考える人たちが、東北の自治体に率先して寄付をしたのです。そうした事情もあり、2012年度の納税額は前年度から一気に10倍以上に増加し、総額649億円になりました。 東日本大震災を機に認知されるようになり、ふるさと納税に関する本が数多く出版され、いまではちょっとしたブームになっています。その理由は、納税した自治体から贈られてくる返礼品が豪華になっているからです。 税収が乏しい地方都市では、海産物や農産物を特典にして、たくさんのふるさと納税を集めようとしています。総務省は特典合戦が過熱しないように、たびたび注意喚起していますが、地方自治体も少しでも税収を上げようと必死です。
返礼品合戦は「趣旨から逸脱」?
過熱した返礼品合戦は、まさに「ふるさと納税戦争」ともいえる様相です。そうしたブームを静観しているのが東京都です。制度が創設された当時、石原慎太郎都知事は一貫して反対していました。そうした立場は、猪瀬直樹都知事、舛添要一都知事にも受け継がれています。 「ふるさと納税制度は、納税の大切さ、ふるさとの大切さの再認識、自治意識の進化に役立つという意義を持っており、その制度の趣旨については、東京都としても理解をしております。しかし、応益原則(行政サービスの受益の大きさに応じて税負担すべきという考え方)に反するという点で問題もあると考えています。近年の各自治体の動きは、寄付金を呼び込むための返礼品競争の様相を呈しており、制度本来の趣旨から逸脱しているのではないかとの懸念も抱いております」(東京都財務局財政課) 総務省の試算によると、2014年度に東京都が得るとされていた個人住民税の都民税約7億円分と、区市町村民約11億円分が減収したとされています。ふるさと納税の導入によって、東京都全体で18億円の税収が他の地方自治体に流出するのですから、都や都内市町村にとって穏やかな話ではありません。 2015年度から、ふるさと納税の手続きが簡素化されるとともに税の控除が拡充されることになりました。こうした政府の方針にも、東京都は反対を表明しています。