実際の健康寿命はもっと長かったと判明。にもかかわらず70代で老けこむ人に共通する思いこみとは…
「引退」を待ちわびる人ほど老化する
70代で老けこむ人の典型は、仕事をリタイヤしたときから、一切の活動をいっぺんにやめてしまうというケースです。これまで懸命に働いてきたのだから、退職したらもう何もせず家でゴロゴロすごしたいと、指折り退職の日を待っている人もいます。 しかし、70歳まで現役で仕事をしていた人が、退職後何をするのかを考えることもなくリタイヤすると、一気に老けこんでしまうことが多いのです。 働いているときは、デスクワークのような仕事であっても、通勤などで思っている以上に体を使っているものです。それなのに退職してから家にこもりがちになってしまうと、1ヵ月もすれば運動機能はずいぶんと落ちてしまいます。 また、脳機能の面でも、働いていれば、日々それなりの知的活動や他者とのコミュニケーションがあり、さまざまな出来事にも遭遇することになりますが、ただ家ですごしているだけでは、そういった脳の活動はなくなり、認知症のリスクが高まっていきます。
長い晩年を幸せに暮らす最大の秘訣
特に、前頭葉の老化が進んでしまいます。前頭葉とは、前編で述べたように創造性や他者への共感、想定外のことに対処するといった機能をもつ部分です。ここが老化していくと何事にも意欲がなくなり、活動することが億劫になって、運動機能の低下と脳の老化にさらに拍車がかかります。見た目の印象でも、はつらつとしたところが失われた、元気のない老人に変貌してしまうのです。 そうならないためにも、退職を迎えたら、これまでの仕事の代わりに次に何をやるのか、準備をしておくことが大切です。退職して、しばらくゆっくりしてから次のことを考えようなどと思っていると、いつの間にかダラダラとすごす生活に流されて、それが習慣になってしまいます。 寿命が延びて、90歳、100歳まで生きるようなこれからの時代は、年をとったので「引退する」という考え方自体が老後生活のリスクになります。引退など考えずに、いつまでも現役の市民であろうとすることが老化を遅らせて、長い晩年を元気にすごす秘訣です。 〇こちらもオススメ! ・40代の意欲の低下は前頭葉の老化だった。何歳からでも遅くない! 脳を若返らせる習慣を心がけよ
和田 秀樹(精神科医)