静岡大と浜松医大の統合再編、合意から4年で静岡大学長が「リセット」…独立確保で折り合えず
静岡大の次期学長選考で再選された現学長の日詰一幸氏(69)が31日、記者会見し、浜松医科大との統合再編問題について「合意書を今年度内をめどにリセットする」と述べ、両大で交わした合意書通りの統合再編はしないと医大に申し入れる考えを示した。合意を白紙にする方針を事実上示したことで、再編問題は完全に暗礁に乗り上げた。 【表】静岡大と浜松医大の統合再編を巡る、これまでの経緯
日詰氏は記者会見で「これ以上協議しても打開の出口が見えない。一度区切りをつけ、再スタートしなければいけない」と述べた。総合大学としての機能強化や魅力を最大化する取り組みに尽力すると強調した。
一つの法人のもとに静岡、浜松にそれぞれ独立した新大学をつくる「1法人2大学」案で両大が合意したのは2019年3月。しかし、静大浜松キャンパスと医大が統合する形のため、静大静岡キャンパスを中心に「大学が割れる」と反対意見が噴出し、21年1月に無期限延期された。
静大は代替案として合意書と異なる「1法人1大学2校」案を提示したが、医大や静大浜松キャンパス側は「独立性が失われる」として、合意書通り「2大学」案での統合再編を求め、議論は平行線をたどってきた。
日詰氏は「代案も協議の対象にしてもらえなかった。合わせてリセットする必要がある」と述べた。
日詰氏は、教職員らの意向投票で統合再編推進派の副学長を上回ったことに、「一定の理解をいただいたと認識している。静岡大学の意思が明らかになったと受け止めている」と述べた。医大との医学・工学・情報学の連携強化を今後も進めるとしたが、「一つの答えとして、本学は地区ごとの大学に分割せずに総合大学としての形を維持、あるいは発展拡大していく。フェーズが変わった」と説明した。
浜松側では困惑が広がった。医大の今野弘之学長は「協議がないまま合意書のリセットを記者会見で話したことは大変遺憾。大学間の信頼を根本的に毀損(きそん)するもの」とコメントした。
浜松市では、若い世代を呼び込み地域産業の振興にも役立つとして新大学に期待が高く、早期実現を求める期成同盟会を作っていた。同会長を務める中野祐介市長は「地域に説明がない。浜松医大、地元の浜松市に誠意をもって対応してほしい」と要望した。
静大浜松キャンパスの教員の1人は「何も決まらない暗黒の4年間になってしまった。他大学が独自の魅力を磨いているのに、静大が埋没していく」と肩を落とした。