わが子が「いじめる側」だった時、親はどうすべきか
いじめは、世界中の子どもたちや家族に蔓延している問題だ。親としては、全力を尽くして子供をいじめから守りたいと思うだろうが、自分自身の子供がいじめっ子の傾向を示した場合、その状況を理解するのは難しいかもしれない。 忘れてはならないのは、自分の子どもが永遠に「いじめる側の人間」でいる運命ではないこと、何か重要な理由があってそうした行動に出ていることを理解することだ。幼少期に介入することで、こうした傾向と闘うことができる。 Journal of Child and Family Studies誌に掲載された2018年の研究は、社会的文脈における攻撃性は、必ずしも悪意によって引き起こされるとは限らず、複雑な社会的・防衛的力学が関与している可能性もあるという議論を支持している。 例えば、子どもはいじめを、他の者が感情的な支配や地位を得るのを阻止するための道具として利用することがある。こうした時の子どもは、他の者がどう感じるかとは無関係に、自分の脆弱な自己意識を守らなければならない、という絶え間ない欲求に駆られているのだ。 いじめの根本原因に対処するためには、家族内での力関係を調べることも不可欠だ。自分の子育てを見直し、例えば、権威主義的な子育てがいじめを助長していないかどうかを考えることが提案されている。 研究者は親に対して、次のように自問をするよう勧めている。 ・家庭内で、他の人について思いやりに欠けるジョークを言っていないだろうか? そのような「冗談」は、思いやりに欠ける文化を育み、子どもはそれを真似するかもしれない。 ・子どもが、自分の感情について親と分かち合える、安全でオープンな場があるだろうか? 親が子どもを支える姿勢を見せる環境は、不満のはけ口としていじめが現れるのを防ぐのに役立つ。 ・子どもに対して、非現実的な期待を押し付けてはいないだろうか? 「成功しなければならない」という過度なプレッシャーは、ストレスにつながり、表に出せない不安のはけ口として、ネガティブな行動をすることにつながる。 ・子どもは、怒りや嫉妬といった感情を素直に表に表せているか、それとも溜め込んでいるか? 抑圧された感情は、仲間に対する攻撃性に変わることがある。 いじめの傾向と闘い、子どもの共感力を高めたいと願う親に向けて、効果的な4つの戦術を紹介しよう。 ■1. 「ポジティブな力」を探すよう促す 研究によると、いじめは、社会的環境におけるパワーダイナミクス(力関係)と深く関係している。いじめはしばしば、支配や社会的階層を維持するための誤った試みとして現れる。 子どもは、仲間との相互作用を通じて自己の妥当性を確認しようとするが、その際に、周囲の社会的力学をコントロールしようとすることが多い。例えば、いじめは「偽りのパワーの感覚」を生み出すという研究結果がある。他の子どもたちが一緒になって誰かを笑いものにするなど、社会的な同調によって強化される場合は特にそうだ。 親は、こうした「偽りのパワー」の代わりに、共感や包括性、支援から派生する「ポジティブなパワー」の考えを奨励することができる。こうしたアプローチは、真のパワーは、いじめからではなく、他者に対するポジティブな行動から生まれることを子どもに理解させるのに役立つ。 例えば、宿題で困っているクラスメートを助けるよう励ますことができる。また、地元のフードバンクでの手伝いや、近所の清掃活動への参加、動物保護施設で手伝うなど、社会奉仕活動に参加させることもできる。グループプロジェクトやスポーツに参加させて、チームワークを奨励することもできる。つらい時期を過ごしている友人の話をよく聞く方法を教えることもできる。 ■2. 健全な喜びの源を見つけ出す 2021年の研究は、いじめは「束の間の快感」を与え得ることを示唆している。心理学の世界では、他の人の苦しみや不幸を見聞したときに感じる喜びや嬉しさなどの感情を「シャーデンフロイデ」と呼ぶ。 いじめによって、子どもの社会的地位や自尊心が一時的に高まることは、いじめ行為を助長する可能性がある。 親は、こうした破壊的な方法で子どもが充足感を求めるのではなく、肯定的な交流や成果に真の喜びを見いだすよう励まし、導くことができる。肯定的な喜びの源としては、絵を描く、楽器を演奏する、文章を書く、ガーデニングをするなど、充実した趣味が挙げられる。 また、ポジティブで強い社会的なつながりを育むために、子どもが遊びの約束やグループでの外出を企画するのを手伝うこともできる。学業やスポーツ、個人的なことなどで子どもが達成したことは、功績を認め賞賛しよう。家族で過ごす充実した時間を計画することで、子どもにとって良い思い出を作り、よりどころとなる有意義な人間関係を築くことができる。