神宮寺勇太、デニム作りに挑戦する!──「HITOTOITO」(特集:車とともに旅に出よう。)
旅の季節がやってきた。西へ東へ、国境さえも越えて、車はどこまでも私たちを運んでくれる。かつて、若きジェントルマンは未知なる世界へ、見知らぬものと出会い、自身を高めるために旅に出た。『GQ JAPAN』はこの秋、瀬戸内、能登、函館、そしてソウルへと学びの旅を提案する。車を相棒に、グランドツーリングへと出かけよう。 【写真を見る】デニム作りに挑戦する神宮寺勇太
瀬戸大橋が架かる瀬戸中央自動車道から山陽自動車道に入り、西へ。次に神宮寺が向かったのは、広島県福山市だ。デニムの生地生産量全国7割という圧倒的なシェアを誇り、世界的に有名なデニム生地メーカー、カイハラのお膝元としても知られる。目的は、デニム作りを学ぶこと。今、神宮寺にとって“学び”は大切な時間だという。 「夏からダンスレッスンを再開し、ボーカルレッスンも始めました。インプットする時間を取ることによって自分が健康になるというか、心が健やかになるんです。今回のデニムを学ぶ旅も、これからの活動の糧になるような予感がします」 約90分のドライブトークを終え、到着したのは「HITOTOITO」。デニム作りなどを学べるユニークなツーリズムを実施する。地元の縫製会社などが集い、始まった繊維産地継承プロジェクトだ。歴史をひもとけば、広島県福山市の北部は日本3大絣のひとつ、備後絣の産地として江戸時代から織物が盛んだった。その後、藍染の技術を応用してデニムを生産するようになっていく。しかし近年は技術者の高齢化が進み、縫製の担い手が減少。海外からの技能実習生などに頼るものの、将来的な産業の空洞化を懸念し、スタートしたのがHITOTOITOだ。 今回、神宮寺はバックポケットの縫い付けを体験した。デニムの縫製のなかでも、もっとも簡単なパートというが......。 「ミシンを使うのは小学校の家庭科実習以来(笑)。いいですか? スイッチペダルを踏みますよ。(カタカタカタカタ)む、難しい。若干このステッチ幅が広いかな......でも、意外とイケるかも!? どうですか? 自分の評価を高くしたくないけれど、わりといい出来じゃないですか?(笑)」 デニム作りにおいて、オートメーション化されているのは生地の裁断程度とのこと。あとはすべて人の手作業によるというからおどろきだ。とりわけ縫製はサイズレンジが広く、デザインや仕様も多様。曲線や立体的な工程があり、かつ微妙なニュアンスが必要なため、均一なものしか生産できず情緒がない機械での大量生産には不向きであるのだ。 「貴重な体験でした。この学びで、“人の手”がいかに優れているのかを理解しました。熟練の技術者は、一本のデニムをわずか60分程度で、しかも慣れた手つきで縫い上げてしまう。まさに鍛錬を積み重ねた職人技。この技術を日本から絶やしてはいけないと思いました。そして、今回は実現できなかったけれど、自分が身につけるものを自分の手ですべて作れたとしたら、とても豊かな気持ちになれることに気が付きました」