“妻殺害”で有罪判決の講談社元次長が2度目の上告 義父が心境初激白「私は朴君を一度も疑ったことはない」
判決では、夫妻がもみあいになった寝室のマットレスに、佳菜子さんの「唾液混じりの血痕」と「失禁の痕跡」が残っていたことをあげ、「(それら以外に)窒息の痕跡は見当たらない」などとして、朴被告に有罪を言い渡した。 弁護側は、法医学者の意見書をもとに「二つの痕跡は窒息以外の原因でも生じ得る」と反論しつつ、佳菜子さんの心理状態の観点からも自殺の可能性を訴えてきた。 差し戻し審で意見書を提出した精神科医は、佳菜子さんが「極めて重篤な精神病症状を伴ううつ状態」にあったとみており、こう話す。 「本来なら入院が望まれる重症患者で、突発的な自殺も十分考えられた。判決では『階段の手すりにジャケットをくくりつけて首をつるのは、自宅における自殺の仕方として奇異』とされていましたが、精神病症状がある患者の行動に、常識は当てはまらない。そんな短絡的な判断を裁判官がすること自体が、奇異と言うほかありません」 ■拘置所の朴被告から後悔の手紙 Sさんは、「夫婦仲はよかった。朴君が佳菜子を手にかけるなんてありえない。私は朴君を一度も疑ったことはない」と力を込める。 拘置所の朴被告からSさんのもとに届く手紙には、妻を守れなかったことへの後悔がたびたびつづられていたという。 「朴君は『仕事よりも家庭にもっと時間を割くべきでした』と反省していた」 以前、筆者の取材に応じた朴被告は、 「事件当時、(佳菜子さんから)毎週のように『やることがいっぱいあるけど、どれをすればいいかわからない』と電話がかかってきた」 と話していた。事件の日の夕方には、「夕ご飯のこと考えられない」「涙が止まらない」などと不調を訴えるメールが15通届いていた。
朴被告の4人の子どもたちのうち、当時8歳だった長女(現在、高校2年)は、精神的に追い詰められていた母の姿を覚えているという。 「末の弟が生まれてから、ママのイライラが目立つようになりました。パパは、感情的になったママを必死で落ち着かせようとしていました」 一方、中学3年の長男と中学1年の次女は、仲の良かった両親の姿が記憶に残っているという。 「よく2人で(スマホゲームの)ツムツムで遊んでました」(長男) 「ママのアイスを勝手に食べたとき、ママだけじゃなくてパパも一緒に怒ってくれた」(次女) ■「パパがママを殺してたらどうする?」 事件の夜に何があったのか、子どもたちにも知る由はない。ただ、長女は子ども部屋に逃げてきた朴被告の姿を覚えているという。 「物音で目が覚めたら、末の弟を抱いたパパがいました。次に起きた時は、家が大変なことになっていて……」 子ども部屋の扉の外側には、錯乱した佳菜子さんが包丁を突き立てたとみられる傷が12カ所ついていた。 4人の子どもたちは現在、朴被告の実母(72)と暮らしている。父の帰りを待ち続ける中、過去には疑念が頭をもたげたこともあったようだ。 一審があったころ、長女と次女は「パパがママを殺してたらどうする?」「そしたらパパは家族じゃない」などと話した。携帯電話を持ち始めたばかりだった長女はネットで調べ、ますます不安を募らせたという。 「SNSでは匿名の人たちがパパを殺人犯だと断定していて、何が正しいのか全部わからなくなっちゃって……。それでパパに『ママを殺してないよね?』と手紙を書いたら、『パパを信じてほしい。ママとみんなのことを愛している』と返ってきました」(長女)