《連載:検証 2024衆院選 茨城》(中) 立民6区で初、国民5区死守 追い風「伯仲」手繰る
「裏、裏、裏の政治に終止符を打とうではありませんか」 24日、JR土浦駅前に立った立憲民主党の野田佳彦代表の声には、力が込もっていた。 衆院選は自民党派閥裏金事件を巡り、政治改革が争点となった。選挙戦終盤には、非公認候補が代表を務める政党支部に対し、公認候補の支部と同額の活動費2000万円を支給していたことが明らかになった。 野田氏と同日、東海村で国民民主党の榛葉賀津也幹事長は演説後、「潮目がね(変わった)。2000万円の報道は相当効いている」と語った。 「前回より明らかに反応がいい」「手を振ってくれる、声をかけてくれる人が多い」。立民、国民の陣営関係者は追い風を肌で感じていた。 立民は6区の青山大人氏が小選挙区で初勝利。得票は自民候補に対し、選挙区内の5市全てで上回った。 街頭では子育て支援や物価高対策などを訴え、防衛費増大や裏金事件で政権を批判。100を超える地区後援会を軸に地元密着をアピールし、前回差をつけられたつくば市での浸透に注力。自民の高い組織力を警戒し「終盤も全く緩みはなかった」(県連幹部)。 国民は5区の浅野哲氏が県内唯一の議席を堅守。自民候補に1万7000票以上の差をつけた。 演説では手取り増へ「年収の壁」を178万円に引き上げることなど、政策に重点。交流サイト(SNS)も駆使し、ライブ配信でコメント欄の書き込みに答えるなど、若者や子育て世代への浸透を狙った。母体の日立グループ労組や連合茨城は最後まで引き締め、組織力を発揮した。 報道機関の終盤調査では、両氏ともに無党派層の4割以上に支持を広げ、自民支持層の一部に食い込んだ。追い風の中、油断なく戦い抜いた。 「与野党伯仲の状況になった。これからの政治、茨城が変わっていく力強い兆しになった」。今回の選挙結果を、立民県連の選対本部長を務めた小沼巧氏は評価する。 公認候補は1勝1敗。「友情支援」とした無所属候補や、国民の浅野氏を含めると、非自民系で計4勝と自民に勝ち越した。 一方で、前回は公認4人のうち2人が比例復活、今回、県内の立民勢力はむしろ縮小。比例票は県内で1万8000票以上減らした。「独自候補のいない選挙区では比例票も獲得しにくい」と指摘し、2区などに擁立できなかったことを悔やむ声は党内からも漏れる。 国民は浅野氏の勝利に加え、県内の比例票が倍増した。県連の二川英俊幹事長は目標を達成できたとしながら「複数の小選挙区で候補者を擁立できるよう、努力を重ねていかないといけない」と話す。 今回、両党は政権批判の受け皿となり、多くの支持を得た。確かな基盤づくりでさらなる党勢拡大につなげられるかどうかが鍵となる。
茨城新聞社