マイケル・セイラー氏、ビットコイン買い増し計画により株主価値を増大
マイケル・セイラー(Michael Saylor)氏の世界では、経済が逆さまになっているように見える。 同氏は、もともとあまり知られていないソフトウェア企業だったマイクロストラテジー(MicroStrategy)を、米国企業最大のビットコイン(BTC)の強気の買い手へと変え、膨大な量の暗号資産(仮想通貨)を蓄積している。 10月31日、マイクロストラテジーは210億ドル(約3兆1920億円)の自社株を発行し、その後売却すると発表した。これは、他の多くの上場企業であれば、既存株主にとって悲惨な結果となる動きだ。というのも、この計画が発表された時点で同社の時価総額は約500億ドル(約7兆6000億円)であり、既存株主の持ち株比率は約3分の1に希釈されることになるからだ。株価が33%ほど急落しても、それほど驚くことではないだろう。 だが、マイクロストラテジーと同社を取り巻く熱烈なファン層は、他の多くの銘柄とは異なる。同社の株価は今年これまでに3倍を超える上昇となり、10月31日には約1%上昇し、時価総額が暗号資産取引所コインベース(Coinbase)を上回った。コインベースは最大の暗号資産関連株だったが、第3四半期の業績が期待外れとなった後に下落した。マイクロストラテジーはビットコインの保有量がかなり多いため、同社の価値はビットコインに連動するが、ビットコイン価格が下落するなかでも上昇した。 マイクロストラテジーの株価上昇は、「同社におけるビットコインの漸進的希薄化戦略に対する、投資家の信頼の証だ。同社は資本市場を活用してビットコインを購入し、株式をさらに発行することで希薄化するが、ビットコインの購入を通じて株主価値を増大させる」とTheyaのグロース責任者、ジョー・コンソーティ(Joe Consorti)氏は述べた。
ATMオファリング
この株式売却は、いわゆる「アット・ザ・マーケット(ATM)オファリング」と呼ばれるもので、企業が株式をそのときの市場価格で直接売却できるようにする取引であり、従来の売出しに比べて、より柔軟で負担の少ない資金調達方法となることが多い。 ブルームバーグ(Bloomberg)がまとめたデータによると、今回の売却はこのような売出しのなかでは過去最大で、その規模は従来の4倍だ。 マイクロストラテジーの株主が大幅な割引を要求するのではなく、計画発表前の価格でのこのような希薄化を受け入れているという事実は、セイラー氏の企業戦略に対する株主たちの信念の強さを示唆している。 「マイクロストラテジーの株主はユニークな集団だ。通常、既存株主の株式が希薄化するのは悪いことだ」とCoinDeskのシニアアナリスト、ジェームズ・ヴァン・ストラテン(James Van Straten)氏は述べたうえで、「だが、私は同社の株主として、希薄化を歓迎する。なぜなら、同社がビットコインを購入することで、企業としての1株あたりのビットコイン保有量が増加し、株主価値が増大することを知っているからだ」と付け加えた。 |翻訳・編集:廣瀬優香|画像:テネシー州ナッシュビルで開催されたBitcoin 2024に登壇したマイケル・セイラー氏(CoinDesk/Danny Nelson)|原文:Michael Saylor Conjures Stock Market Magic With Giant Plan to Buy More Bitcoin
CoinDesk Japan 編集部