認知症の初期症状を医師が解説 物忘れが多いのは認知症の前兆? 始まりのサインと進行段階を知っておこう
生きていると、必ず年はとります。それは、脳も同じです。加齢に伴って「物忘れ」などが増えていくのは当然とも言えますが、それが「認知症」の初期症状なのかどうかは素人にわかりません。 そこで「認知症の初期症状」について、内科医の塚本善峰先生(あいあいクリニック院長)にMedical DOC編集部が話を聞きました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
認知症を医師が説明 脳血管性・アルツハイマー型・若年性など種類の違いとは?
編集部: 「認知症」について教えてください。 塚本先生: 「認知症」とは、脳に何らかの障害が起こることによって、記憶力や判断力などが低下した状態です。社会の高齢化にともなって、認知症の方は年々増加しています。 編集部: やはり、高齢者がなるものなのですか? 塚本先生: そうとは限りません。 若くても、脳卒中などをきっかけに「脳血管性認知症」となってしまう方もいらっしゃいますし、交通事故などで頭部を強く打ったり、最近だと新型コロナウイルス感染症に羅患してしまったりすると、後遺症として認知症症状が出てしまう方もいます。 さらに、これらのような明確な要因がなくても、若くして認知症を発症してしまうケースもあるのです。65歳未満で認知症を発症した場合、「若年性認知症」と呼ばれます。 編集部: 認知症にも種類があるのですね。 塚本先生: そうですね。「若年性認知症」はあくまで年齢による分類ですが、病態としては「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」の4種類が代表的な分類です。 編集部: どのような症状が出るのですか? 塚本先生: それぞれの認知症によって、症状は少しずつ異なりますが、共通しているのはやはり「記憶障害」いわゆる「物忘れ」ですね。
物忘れが増えたのは認知症の初期症状? 認知症の前兆で怒りっぽくなる・思い込みが激しくなるって本当?
編集部: 「物忘れ」が増えるのは、やはり認知症なのでしょうか? 塚本先生: そうとは限りません。物忘れには「加齢によるもの(正常な物忘れ)」「正常な物忘れと認知症の間の状態」「認知症によるもの」「ほかの病気による物忘れ」などがあるのです。物忘れが増えたからといって、すなわち「認知症」ということではないのです。 編集部: 物忘れが加齢によるものなのか、認知症によるものなのか、どうやって判断するのですか? 塚本先生: 「出来事の一部を忘れてしまう」のが「加齢による物忘れ」で、「出来事そのものをすっかり忘れてしまう」のが「認知症」の特徴と言われています。 例を挙げると、「朝食に何を食べたか忘れてしまう」のが「加齢による物忘れ」で、「朝食を食べたという事実を忘れてしまう」のが「認知症」です。 編集部: ほかには何かありますか? 塚本先生: もうひとつのわかりやすい目安としては、「本人の自覚があるかどうか」ということがあります。 忘れっぽくなったという自覚があるのが「加齢による物忘れ」で、「自分はなんともない」と自覚がないのが「認知症」という傾向があります。あとは、「認知症」の場合は、「物忘れ」以外の変化も表れてくるはずです。 編集部: 例えばどんな変化がありますか? 塚本先生: 「今までできていた作業ができなくなった」「今まで好きだったものや事柄に興味がなくなった」といった変化、「季節や時間、居場所の感覚がわからなくなった」「些細なことで怒るようになった」なども、認知症の初期症状です。 また、物事が億劫になってしまう方も多く、例えば「まめに片付けていた人なのに、部屋が散らかるようになる」「買い物の支払いで、端数の小銭を出すことなどをしなくなり、財布に小銭がどんどん溜まるようになる」なども、認知症の初期症状であることが考えられます。