「痴漢外来」は加害者を救えるか 刑務所4回・通院4年でも続く再犯するかもしれない恐怖「今も不安と戦っている」
■再犯繰り返し4回刑務所「その状況になったらそれしか考えられない」
現在クリニックで治療を受けている小林さんは、過去に4回、痴漢で刑務所に入っている。中学1年生の時に路上痴漢・のぞきを繰り返したことに始まり、高校1年生で計3度の補導、21歳時に3度逮捕され罰金刑にもなった。さらに26歳では執行猶予付きの実刑になると、さらに再犯し2度刑務所へ。出所後、女性と婚約することができたものの、35歳にまたも痴漢でけがを負わせ4回目の刑務所行き。女性との婚約は破棄された。ただ、現在は出所後に「痴漢外来」に通うことで、この4年間は再犯なく暮らせている。 4回目の服役を終えた後、どうやって痴漢外来に行き着いたのか。「婚約者もいて、仕事も順調なのに、またやってしまって全て失った。もうここで何かを治療しなきゃと担当の弁護士さんを通じて助けてくださいと言ったところ、探し当てた1カ所が今現在かかっているクリニック。現在は毎週1回の夜間ミーティングに参加させてもらい、あとは月1回の診察と投薬を欠かさず続けている」。診察では、他愛もない世間話だけで終わることもあれば、問題行動(痴漢)を考えて始めて危ないことを伝えたり、普段他の人には話せないような内容を打ち明けたりしている。「自分に何が問題があるのか気づけた。僕の場合は感情のコントロール。例えばストレスのはけ口として、犯罪をしていた。本当に真っ当な人生を送りたいのが本音。幾度となく被害者も作ってきて、本当に申し訳なさ、反省も後悔もしているのに止められない自分がいる。捕まればまたゼロからやり直しで、被害者を作ってしまうとわかっていても、その状況になったらそのことしか考えられなくなり、後先考えずにやってしまった」と、自身の問題行動を振り返った。
■治療の難しさ「最低2年は通院を」当事者「治療は一生かけてやっていく」
より再犯率を下げるため、治療はどう進んでいくべきか。原田氏は痴漢を犯した人に対して、現状は保険がきかず自費で受けるしかない治療を、国が補助して義務付ける必要性を訴えた。「本人から来る分にはいいが、初犯で執行猶予がついたり罰金で済むと、あとは『自己責任で頑張って』。それでは頑張れないし、刑務所の中でも同じような(治療の)プログラムはあるが、痴漢は刑期が短くて3カ月か4カ月。これは一種の依存症みたいなものなので、私は最低2年は病院に通ってくださいと言う。週1回の方もいれば週5回の方もいて、期間は相当かかると思うが、心理療法はそれほどお金がかからない。薬も場合によっては保険もきく。刑務所に入れば1人当たり、年間300万円から400万円かかるのだから、刑務所に入ることを考えれば国が出してもいいと思う」。 また小林さんは、性犯罪を厳罰化して加害者を減らすことに賛成ではあるものの「厳罰化だけでは足りないのかなとも感じている」という。4年間、クリニックに通っていても、通院の回数や薬の量を減らせるとは思えない。「常に不安と戦っている。先生は年齢とともに性欲も落ちるから大丈夫というが、僕自身は常に不安。治療も4年目だが、たった4年という認識で通っているし、もしかしたらこの後やってしまうかという不安もある。最初は性欲と一括りだと思っていたが、前回に婚約が破断になった経緯もあってか、今は別物だと感じた」。 ただ今の小林さんは、病気とされたことで救われている部分がある。「クリニックにかかって窃触障害という病名がつき、治療を受けていることで安心した。(直接関係がない)被害者の方と直接話す機会もあり、被害者感情を真剣に受け入れたいと常日頃から考えている。治療は一生かけてやっていく気持ちで生活している」と語っていた。 (『ABEMA Prime』より)