悪質広告で儲けてもお咎めなし? これでいいのかインターネット広告
有名人のなりすまし偽広告がインターネットで急増しています。著名人の写真を無断で利用し、「『投資で儲ける方法』を教える」と訴求しているフェイク広告などを見たことはありませんか? これらは、著名人を広告塔に起用したように装い、第三者が勝手に著名人になりすまして出稿した規約違反の広告です。 投資を勧める広告以外にも、目を疑うようなフェイク広告が2023年8月ごろから増加しています。 増加しているフェイク広告の例 ・ラーメンは人体に危険 ・牛乳に若返り効果があると証明された ・青木ヶ原で雪女を目撃 他にも、広告をクリックすると「ウイルスに感染しました。今すぐ電話してください」と表示され、消費者が信じてサポートを受けるために電話しようとすると別のサイトに誘導されて金銭を要求される「サポート詐欺」と呼ばれる手法など、いずれも消費者の安全を脅かすものです。昨今こういった違反広告がSNSやインターネット上ででまん延しています。 しかも、これらの広告はインターネットの奥深くにある怪しいサイトだけでなく、FacebookやInstagram、X(旧Twitter)、YouTube といった多くの人が利用するSNSをはじめ、Googleアドセンスを掲載する大手サイトやメディアなどにも掲載され、誰にでも表示される可能性があります。 有名人になりすます広告や根拠のない情報の広告、サポート詐欺広告などの広告は誇大広告、優良誤認を引き起こす可能性があり、以下のような複数の法律で規制されています。 ・金融商品取引法 ・不正競争防止法 ・景品表示法 つまり、違法な広告の可能性が高いのです。肖像権、著作権の侵害にもあたります。
権利者が対応を求めても対処されない現状
違反広告に関してはNHKや日本経済新聞を始め、複数のメディアがこの違反広告を取り上げており、消費者庁も定期的にインターネットにおける虚偽・誇大表示の監視を実施・指導を行っています。しかし、この数か月で状況の改善は見られていません。しかも、なりすまし広告に関しては、なりすまし被害を受けている本人が声を上げても対応されていない状態が続いています。 たとえば、ZOZOTOWNの創業者で実業家の前澤友作氏は、2023年9月2日に、自身のX上でFacebook Japanに対して自身の肖像が勝手に利用されている違反広告の対応を求める書面を公開しています。 FacebookやInstagramに掲載された違反広告を経由して入力したクレジットカードが不正に利用され、海外の番号から電話がしつこく電話がかかってくるようになった、といった詐欺被害にあった人の具体的な被害内容まで記載しています。 しかし、Facebook Japanでは対応ができないとのことから、Facebookの運営母体である米Meta社に問い合わせをした書面を9月7日にX上で公開していますが、本記事執筆現在(2023/11/22)、続報は公開されていません。 また、実業家の古川健介(けんすう)氏は著名人を勝手に使った偽広告に対して、Facebook上で、「違反広告の通報」を行ったものの、Facebookの広告規定に違反するものではないという理由で、広告の削除ができなかったやりとりをXで公開しています。 肖像権侵害に関して「法的処置を取れるのは本人もしくは代理人に限られる」という観点はありますが、筆者は「規約に違反する広告ではない」という回答には違和感を覚えます。 また有名人だけではなく、SBI証券、楽天証券をはじめ複数の企業も自社を騙った広告を認識しており、注意喚起を行っています。 多くの著名人、企業が問題を認識し対応を求めている中、対策が進まない背景にはどのような問題があるのでしょうか?