世界は脱ガソリン車へシフト 都が率先して推進“水素社会”どうなった?
課題は価格と生産体制 都の目標は2025年までに10万台
舛添都政で始まった水素社会への取り組みは、現在の都政にも引き継がれています。都は燃料電池車の普及に向けて水素ステーションの整備・拡大に取り組んでいるほか、燃料電池車の購入を奨励するために補助金も出しています。 都のみならず政府からも補助金が出ており、かなり割安で燃料電池車を購入することができるようになっています。しかし、燃料電池自動車は約700万円と高額なため、補助金があっても購入者が思うように増えていないのが現状です。また、満タンにするための燃料代は約5000円とガソリン車と大差がなく、費用面が普及の大きなネックになっています。 燃料電池車のメリットは、わずか3分ほどで燃料を満タンにできるうえ航続距離は約600キロメートルと長い点です。同じ環境にやさしいとされるEVは航続距離が短いので燃料切れで遠出をするためには不向きとされてきました。FCVでは、そうした心配がありません。 「EVに比べると、FCVは自動車メーカーの生産体制が整っていませんでした。そのため、普及の速度は遅かったのです。今般、ようやくメーカーの量産体制が整いました。今後は、車両価格が下がっていくでしょう。そうなれば、FCVの普及も加速していくでしょう。都は2020年までにFCVを6000台、2025年までに10万台まで増やすことを目標に掲げています」(同) 羽田空港でも燃料電池を搭載したフォークリフトの導入が決まりました。また、水素社会の実現を早めるために、政府は水素ステーションの設置基準などの規制緩和も検討しています。民間企業でもFCVの導入が相次ぐなど、着実に水素社会の実現に近づいています。 水素社会への取り組みは、まだ緒に就いたばかりです。政府や都は一定の区切りとして東京五輪までの普及目標を立てていますが、水素社会の実現は長い目で考えることが大切です。単なるブームで終わらせないためにも、水素エネルギーへの理解をもっと広げることが重要になるといえそうです。 小川裕夫=フリーランスライター