87歳夫が妻を殺害 入浴せず、昼夜逆転生活…“生活態度”注意し口論 「全部私の責任です」
“いつもの口論”が引き金に
事件の引き金となったのは、被告人いわく「これまでの口論と同じようなもの」だったという。 当日の昼過ぎ、先に昼食を済ませた被告人が「早く昼ご飯を食べたほうがいいんじゃないか」と言ったところ、妻が「まだ遅くないんだ」と反論。その後の詳しいやりとりは思い出せないというが、妻が玄関へ向かおうとしたため、両肩を持ち反対側へ押したところ、もみ合いになった。そして倒れこんだ妻の首を、妻が動かなくなるまで両手で締め続けたという。 なお、被告人が犯行に至った動機について、検察は冒頭陳述で「積もった怒りがピークに達した」と見解を示している。 その後、被告人は自ら119番通報。「妻を殺害しまして、動かないのですが、私が殺害というか絞殺で、脈がありません」などと話し、救急隊員とともに警察がやってくるのを自宅で待っていた。その間、居間のテーブルに自身と妻の身元を証明するマイナンバーカード、「妻を殺害致しました。」と書いたメモを準備していたことなどから、弁護側は自首の成立を主張している。
要介護認定を受ける段階ではなかったが…
近年、「老老介護」が社会問題となっている。厚労省の調査(※1)によれば、要介護者等のいる世帯のうち「老老介護」をしている世帯(※2)は、2022年時点で63.5%だった。 ※1 「国民生活基礎調査」の一環として3年に一度実施している介護の状況調査 ※2 「要介護者等」と「同居の主な介護者」がともに65歳以上だった割合 ただし今回の事件は、夫婦はともに80代で体の自由が利かなくなりつつあったものの、いずれも要介護認定を受ける段階にはなかった。同様の状況に置かれている家庭も少なくないと思われる。 被告人は、自分たちが「干渉しない夫婦だった」と振り返りつつ、次のように述べた。 「元気なときは問題が起きないが、体が弱ってくるとそうもいかない。どこかで切り替えられればよかったが、こうなる前に気づいて話し合えばよかった。全部私の責任です」(被告人質問より) 子どもたちも供述調書などで「家族みんなの責任」などと語っており、他の親族も、妻のきょうだいを含めて寛大な処罰を望んでいるという。 判決は20日に言い渡される予定だ。
弁護士JP編集部