米大統領選、開票所など有刺鉄線で囲み州警察も派遣…トランプ氏敗北の場合「暴力心配」が57%
【フィラデルフィア(米ペンシルベニア州)=金子靖志、グランドラピッズ(ミシガン州)=阿部真司】5日に投開票される米大統領選を巡り、激戦州を中心に暴動や混乱への警戒が強まっている。2020年の前回大統領選を巡って起きた連邦議会占拠事件を踏まえ、選挙結果に不満を持つ支持者が過激な行動に訴えるのではないかとの懸念が高まっているためだ。 【イラスト】大統領選挙の仕組み
激戦州のペンシルベニア州フィラデルフィアでは4日、投票所や開票所で多くの警官らが警備に当たり、厳戒態勢を敷いていた。州によると、地元警察に加えて約5000人の州警察が各投票所に派遣された。
フィラデルフィア近郊の開票所は出入り口に警察車両が待機し、建物周辺を有刺鉄線を張り巡らせたフェンスで囲うなど物々しい雰囲気に包まれていた。警備担当者は本紙の取材に「登録した人しか出入りできない仕組みで、身元確認を徹底している」と話した。
首都ワシントンでも、ホワイトハウスや連邦議会議事堂、民主党のハリス副大統領の公邸などが鉄柵で覆われている。米メディアによると、ウィスコンシンやノースカロライナなど10州では、州兵が開票所などに派遣された。アリゾナ州では州幹部が襲撃に備え、防弾チョッキを着用している。
バイデン大統領とトランプ前大統領が激突した20年の前回大統領選は、バイデン氏が勝利したが、トランプ氏は「選挙に不正があった」と敗北を受け入れなかった。21年1月には、バイデン氏を正式に大統領に選出する手続きを行っていた連邦議会にトランプ氏の支持者が乱入し、占拠した。
激戦州の有権者を対象にした米紙ワシントン・ポストの世論調査では今回、トランプ氏が敗北した場合の支持者の暴力が「心配」だとする回答が57%に達した。ハリス氏が負けた場合でもその割合は31%に上った。
米国家情報長官室や連邦捜査局(FBI)などは4日、共同声明を発表し、国民の分断や暴力をあおる外国勢力の偽情報キャンペーンが今後数週間にわたり激戦州に集中するとの見解を明らかにした。
支持者も懸念を強めている。ミシガン州イーストランシングで3日に行われたハリス氏の集会に参加したトレイシー・メイソンさん(49)は、トランプ氏が負ければ「21年の議会占拠事件と同じようなことが、より組織化されて起きる」と表情を曇らせた。同州グランドラピッズで4日に開かれたトランプ氏の集会に訪れた大学1年のバート・ジムさん(18)は「どちらが勝っても怒りの収まらない人が出てくるだろう」と語り、米国の分断を嘆いた。