《ブラジル》ルーラはハリス支持を表明=「トランプ勝てば伯米関係緊張」
5日の米国大統領選挙に先駆け、ルーラ大統領はカマラ・ハリス副大統領(民主党)を支持すると公式に表明し、「彼女の勝利はアメリカの民主主義の強化を意味する」と強調した。Brasil247、フォーリャ・デ・サンパウロ等、現地各メディアで報道された。 ルーラ大統領は「ハリス副大統領が選挙に勝てば民主主義を強める」と強調した。さらに「2021年、トランプ政権終盤で起きた連邦議会襲撃事件は、世界の見本米国としてあってはならないことだ。世界の見本は崩壊した」とフランスのTF1チャンネルでインタビューに応じた。 ルーラ大統領はハリス副大統領を支持する理由として、民主主義が脅かされる事態は米国のみならず、欧州諸国やラ米地域でも起きており、世界中でファシズムやナチズムが再び違う形で姿を見せているとし、「私は民主主義を強く支持しており、民主主義は国を統一する上で必要不可欠なものである」と強調した。 返す刀でドナルド・トランプ候補を厳しく批判し、かつて米国は世界の見本であったし、その米国の民主主義体制を取り戻すべきだと発言した。トランプ政権は左派勢力から、ヘイトスピーチの過激化、ファシズムやナチズムのような過激思想を回想し、民主主義を脅かすと危惧されている。 とはいえ、ルーラ大統領自身が中国やロシアをはじめとする独裁主義国家群と仲がいいことは周知の事実。隣国ベネズエラの不正が確実視される大統領選挙に関して、ルーラ大統領は「民主主義のあり方への批判」はなく、常にマドゥーロ大統領を擁護している。 とはいえ、米国大統領選に関してルーラ氏は、「トランプ元大統領が再選を果たすことで米伯間は緊張関係になるだろう」と懸念を示した。 ルーラ氏は米伯間外交で最も重要とされている環境問題への影響について触れ、「共和党が勝利すれば環境協力が破棄されるだろう」と懸念した。23年2月10日のホワイトハウス会議で、ルーラ大統領とバイデン大統領は伯米気候変動作業部会を通して森林伐採や土壌劣化との闘いを含む環境協力を進めることで合意していた。 トランプ元大統領は1期目就任後すぐにパリ協定離脱をし、化石燃料の促進に力を入れた。ブラジル政府は、トランプ元大統領が当選することで、アマゾン基金など重要な環境保護財源が米国議会によって阻止されることを恐れている。 また、トランプ氏はSNSプラットフォーム「X」を所有する企業家イーロン・マスク氏と非常に近い関係にあるが、今年8月末マスク氏とアレッシャンドレ・デ・モラエス最高裁判事の間で一悶着が起きたばかりだ。ブラジルとしては懸念材料の一つとなりそうだ。 米国シンクタンクのウィルソンセンターブラジル研究所のブルーナ・サントス所長は、「米国議会では、ブラジルにおける表現の自由侵害について議論が交わされている。トランプ政権となれば更に強化されるだろう」と述べた。国際政治アナリストは、トランプ氏はアルゼンチンのミレイ大統領やエル・サルバドルのナジブ・ブケレ大統領と極右同盟を結ぶのではと予測している。 一方、ルーラ氏は、ハリス副大統領が勝利してバイデンの政策が継続されれば、今まで通りの対話が継続されると期待している。 しかし、現実的には米国選挙は伯仲状態であり、結果は誰にも予測しがたい。ルーラ大統領の個人的な意見表明はあっても、ブラジル政府としては当面、外交上は中立な立場をとり、双方との関係を維持することになると予想されている。