続く「こころ旅」で火野正平さんをしのぶ イマドキTV+
年末が近づいてきた。改めて振り返ってみると、今年も多くの芸能人の訃報に接したことに気づく。先週も少し西田敏行さんのことを書いたけれど、もう新たな作品を見られなくなるのは寂しい限りだ。 録画はしたものの、つらくなりそうで未視聴だった番組を見ることにした。亡くなった火野正平さんが旅人として出演していた「にっぽん縦断 こころ旅 追悼番組」(NHKBSで11月24日に放送)。 視聴者から「心に残る風景」を公募して、火野さんがその場所を自転車で訪ねる旅番組は14年間続いてきた。放送が始まった直後に義母から教えてもらい、全部欠かさずってほどではないけれど、かなり見ていたほうだと思う。休養からの復帰を待っていたけれど、かなわなかった。 追悼番組として放送されたのは「1240日目 熊本県芦北町」。休養直前の4月1日に収録されて未放送になっていたそうだ。最後の収録回ということになる。 放送の冒頭、逝去を悼む字幕が出て、タイトル曲のピアノ演奏がそっとかぶさる。それだけでしんみり。スタッフと楽しげに話したり、出会う人とすぐに仲良くなったり、画面に映るのはいつも通りの火野さん。体調の悪さはうかがえない。走るのは八代海沿いの田舎道。ローカル線での輪行もあって、見どころ多め。カメラが追う火野さんの後ろ姿が胸に刺さる。そのままどこかへ走り去っていくような雰囲気を感じたのは、演出か、感傷か。 番組では今、週替わりでピンチランナーを迎えて「秋の旅」を放送中。回復待ち企画だったはずが、急逝でどうなるのか心配したが、予定通りに続いている。 逝去後に収録に臨むことになった渡辺謙さんは、最初の放送回で生前の火野さんと交わした言葉などを紹介。自分が旅を続けていいのかどうか迷ったことも正直に明かした上で、「火野さんの思いをつなぐ」と話して旅をスタートさせた。 期せずして故人をしのぶ特番のようになった代役企画。切ないけど見届ける。(ライター 篠原知存)