トヨタ「プリウス」なぜ人気復活? 飽和状態のハイブリッド市場で“先駆者”が再び注目を集めるワケ
全面刷新で販売台数が3倍に爆上げ!
トヨタのハイブリッド専用車「プリウス」は、現行モデルが2023年1月に発売された5代目です。 2023年には1か月平均で8262台を登録しており、この販売実績は前年(2022年)の約3倍となっています。 【画像】「えっ…!」 これがプリウスの「斬新すぎるホイール」です! 画像を見る(30枚以上)
新型車とあって登録台数が増えるのは当然ですが、それにしても非常に多く売れているといえるでしょう。 しかも現行プリウスの売れ方を見ると、その約10%をPHEV、つまり充電可能なプラグイン方式のハイブリッドが占めています。現行プリウスは、なぜ販売が好調なのでしょうか。 プリウスが好調な理由について、トヨタの販売店スタッフに聞いてみました。 「現行プリウスは、従来型に比べて、外観が明らかにカッコ良くなりました。エンジンの排気量も従来型は1.8リッターでしたが、現行型は2リッターが主力となり、動力性能も向上しています。 これらの影響で、今までプリウスを選ばなかったクルマ好きのお客さまも現行型を購入するようになりました。 下取り車も、例えばフォルクスワーゲン『ゴルフ』などの欧州車が入っています。先代型からの乗り替えも含め、いろいろなお客さまから選ばれて売れ行きを増やしています」 初代プリウスは、世界初の本格量産ハイブリッド車として1997年に発売されました。その後もハイブリッド専用車として進化を続け、特に2009年に発売された3代目は、トヨタの全店が扱うようになった影響もあり、登録台数が大幅に増えました。 ところが2015年に登場した4代目は売れ行きが低下。内外装のデザインも不評でしたが、それ以上に災いしたのは、ほかのトヨタ車にもハイブリッドが増えたことです。 2011年にはコンパクトなハイブリッド専用車の「アクア」が発売され、法人ユーザーを中心に売れ行きを伸ばしました。「カローラシリーズ」や「ノア/ヴォクシー」、「シエンタ」など、トヨタの大半の売れ筋車種でハイブリッドを選べるようになったのです。 そうなるとハイブリッド専用車のプリウスを買う必要性は薄れます。その結果、ユーザーがいろいろなトヨタ車のハイブリッドに分散され、4代目の先代プリウスは売れ行きを下げたというわけです。 この時に、ハイブリッドを普及させるというプリウスの使命は果たしたと考えて、廃止する方法もあったでしょう。 しかしプリウスは伝統あるハイブリッド車ですから廃止は避けたいです。そこで現行プリウスは、もはや当たり前になったハイブリッドの低燃費ではなく「ハイブリッドの付加価値」に注目して開発されました。 最も重視したのは、機敏に反応するモーター駆動を生かした滑らかで力強い加速です。 そこで販売店スタッフが話す通り、主力グレードのエンジン排気量を2リッターに拡大しました。エンジンとモーター駆動の相乗効果に基づくシステム最高出力は、2リッターの2WDが196馬力ですから、1.8リッターの140馬力に比べると1.4倍に強化されています。先代型の1.8リッターと比較すれば1.6倍です。 外観も大きく変わりました。全高は40mm低い1430mmに抑えられ、全幅は20mmワイド化されて1780mmに拡大されています。リアゲートを寝かせた5ドアクーペ風のスタイルへとカッコ良く進化しました。 全高を40mm下げたことで低重心化され、全幅の拡大と相まって走行安定性も向上。 「滑らかで速い走り」というハイブリッドの付加価値が、カッコいい外観と併せて訴求され、現行型プリウスは、従来型に魅力を感じなかったクルマ好きのユーザーも取り込んだというわけです。