高所恐怖症でも気絶せず! 54mの上空まで上がる「超高所作業車」を体験してみたら揺れすらなかった
北欧の重機メーカーがタッグを組んだ特殊車両
2023年10月29日に富士スピードウェイで開催されたジャパントラックショーin富士スピードウェイ2023。サーキットを大型トラックやトラクタ(トレーラーヘッド)が走り、広大なパドックではトレーラーやキャリアカー、ダンプなどさまざまな用途に応じた架装が施されたトラックや個性たっぷりにカスタマイズされたトラックなどが展示されていた。 【写真】54mの高さから見た富士スピードウェイ そのカスタムトラックの展示エリアで、驚くほど高いブームを装備した高所作業車が目を引いた。最大作業台高54mという世界最大級のブームを持つ、まるでタワーのようなその車輌は、もはや「超」高所作業車といっていい車両だった。 この高所作業車「ブロントスカイリフト S56XR」は、フィンランドの特殊車両メーカー、ブロントスカイリフト社が製造。ベースのトラックはスカニア製。つまりフィンランドとスウェーデン、北欧のふたつの国がタッグを組んで生み出された車輌というわけだ。 ジャパントラックショー会場でこのS56XRを出品したドライバーさんによると、日本で製造される最大の高所作業車は最高作業台高50m。それを上まわる54mもの高さを誇るこの車輌は、ブームに頑丈でかつ柔らかい特性を持つ「フィンランド鋼」と呼ばれる鋼材が使われているから実現したという。またそのブームは横に倒しての作業もでき、その最大作業半径は37.5m。ブームを高所で折り曲げ、高いビルを越えた奥での作業も可能。その作業半径(アップ・アンド・オーバー)は16mというスペックを持つ。ちなみにブロント社はこの高所作業車のほか、屈折はしご付き消防車も製造しているという。
10m程度の高所作業車のほうが怖い
今回、出展者の厚意により、ブロントスカイリフト S56XRのバスケット(作業台)に乗り、54mもの高さまで上り(!)、ジャパントラックショー会場の富士スピードウェイの俯瞰を撮影することができた。じつは筆者は2mくらいの脚立に上るのもビクビクふらふらしてしまうほどの高所恐怖症。 試乗のお誘いをうけたときは「そんな高いところまで……! 気絶しちゃうのでは?」と恐怖してしまったが、実際にバスケット乗り込みブームを上げてもらうとその不安はほとんど感じず、54mまで上っても落ち着いて撮影することができた。その高さまで1本のブームで上がっているのだが、揺れもまったく感じなかったのだ。それはがっしりした柵のある大きなバスケット(最大積載荷重600kg)のなかにいる安心感もさることながら、車体とブームを支える左右3mまで伸びる極太のアウトリガーによる安定感もあったのかもしれない。筆者は住宅地の電線のメンテナンスに使われている2トン車ベースの高所作業車(作業台高10m前後)にも乗ったことがあるが、そちらのほうがむしろ怖さを感じたものだった。 この世界最大級の高所作業車、ブロントスカイリフト S56XRは、高速道路の高架橋や自衛隊のレーダーサイト、風力発電所の点検やメンテナンスといった高層建築物での作業に使われているという。ちなみにブロントスカイリフト社は現在、日本の消防車のトップシェア企業のモリタホールディングスの傘下に属している。
トラック魂編集部 竹野由志雄