KC-46A、RVS2.0は26年から 空自5-6号機は計画通り納入へ
ボーイングで空中給油・輸送機KC-46A「ペガサス」の事業開発を担当するショーン・マーティン・シニアマネージャーは10月17日、不具合が起きている「RVS(Remote Vision System:遠隔視認システム)」の改良版が2026年をめどに量産機へ搭載される見通しだと語った。 【画像】KC-46の給油オペレーター席やコックピット KC-46Aは、米空軍や航空自衛隊などが採用している空中給油・輸送機。米空軍が「カテゴリー1」と位置づける重大な欠陥が複数見つかっており、目玉機能の一つであるRVSも、フライングブームがA-10攻撃機への給油中、低推力の機体の動きに合わせてブームが作動しない、空中給油用カメラの映像が太陽の位置により不鮮明、映像が不鮮明な時にブームが給油を受ける機体(受給機)に意図せず接触する、といった懸念が出ている。 「RVS2.0」とも呼ばれている新システムは、米国政府の報告書によると「開発が順調に進むと仮定した場合、2023年後半から2024年5月にかけて新型RVSとブームの初期運用試験・評価を完了させる計画」だった。しかし、米国での報道によると、コリンズ・エアロスペースが製造するRVS2.0の導入は、2026年にずれ込む見通し。 来日中のマーティン氏は、米空軍でKC-10などに乗務し、ボーイングに転じた後は日本とイタリアが導入したKC-767の教官を務めた経験を持ち、KC-46には2009年から携わっている。RVSの改良について、マーティン氏は「ちょっと時間かかっているのが正直なところだ。量産機へのRVS2.0の搭載は、2026年をめどに進めている」と述べた。また、納入済みの機体もRVS2.0へ改修していくという。 また、KC-46Aの製造過程で、機内に工具やゴミなど「FOD(残置物)」が発見される問題が起きていた。「3、4年前にはあったが、今はFODはなく納入している。引き続き品質を改善して納入していく」(マーティン氏)と語った。 KC-46Aは民間機の767をベースにした機体で、「767-2C」として製造後、空中給油システムを装備後に米空軍などへ引き渡される。ボーイングでは、16年ぶりに大規模なストライキが発生して長期化しているが、2025年に計画されている空自向け5号機と6号機の引き渡しについては「今の管理状態であれば、しっかり納入できるだろう」と影響は回避できる見通しだという。 日本はKC-46Aを6機発注済みで、今年3月末時点で4機を受領済み。9月には米国政府が最大9機のKC-46AをFMS(対外有償軍事援助)により売却することを承認したことから、空自のKC-46Aは最大15機になる。KC-46Aの前身となるKC-767も、2010年度から4機運用しており、空自の空中給油機は最大19機となる見通し。 マーティン氏は競合となるエアバスA330 MRTTと比較した際、同じ駐機スペースでより多くの機体を駐機できる点など、給油能力に対して機体がコンパクトである点などに言及。品質を改善して引き渡していく姿勢を示した。
Tadayuki YOSHIKAWA