KanariaがVtuberデビュー、その理由は / 大きなお腹で踊る妊婦ちゃんみなに勇気付けられる人が続出
YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで8月23日から8月29日にかけて集計されたミュージックビデオランキング、および急上昇ランキングの中から要注目トピックをピックアップします。 【動画はこちら】カッコよすぎ、大きなお腹で踊るちゃんみな 文 / 真貝聡 ■ まずはこの週の初登場曲の振り返りから 今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、6位に米津玄師の「がらくた」がランクインした。満島ひかりが主演を務める映画「ラストマイル」の主題歌として書き下ろされたこの曲。9月4日に米津のYouTubeチャンネルにて公開された満島ひかりとの対談内で、米津は「映画が余韻を残すような終わり方だったので、そこに当てはめるのが難しかった」と話している。MVは石橋静河と寛一郎が出演し、映像作家の渡邊哲が監督を務めた。まるでドラマのような作り込まれた映像に引き込まれる。 17位はDECO*27の「サッドガール・セックス」が登場。8月23日にMVが公開されてから、10日間で180万回再生を突破した。YouTubeのコメント欄では「今まで『下ネタなんて言ってませんよ何勘違いしてるんですか?』みたいなスタンスだったのに急に直球に来てびっくりした……」など、インパクトの強い曲名に反応する声が多く上がった。 46位にランクインしたのは、JO1が日本の“HOT”な魅力を国内外に向けて発信するプロジェクト「HOT JAPAN with JO1」の第5弾映像だ。この企画ではこれまで、山中湖、青森ねぶた、姫路城、北海道のトマム山でJO1のパフォーマンスが撮影されてきたが、今回の舞台は沖縄。JO1は沖縄海岸国定公園の岩礁地帯や世界文化遺産の首里城跡を舞台に、太鼓や笛、箏の音色を新たに加えてボーカルを録り直した「La Pa Pa Pam」を披露している。 53位にはZEROBASEONEの「GOOD SO BAD」がランクインした。8月26日にMVが公開されてから、7日間で3600万回再生を突破し、破竹の勢いを見せている。 ボカロ曲や日韓ダンスボーカルグループが上位に並んだ今週は、下記の3曲をピックアップ。 ■ Kanaria「ネバーフィクション(feat. 星街すいせい)」 ※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場19位 専門学校HALのCMソングとしても話題になった2023年4月リリースの「レクイエム」以来となる、Kanariaと星街すいせいのデュエット曲「ネバーフィクション」が8月23日に公開された。前作「レクイエム」では激しいサウンドに合わせて2人が叙情的に歌っていたのに対し、今作はスローテンポの大人っぽい雰囲気のサウンドで、2人の透き通った美声を堪能できる。「ここに 二人の想いは / まるで泥に咲く花ね」や「花散るまま日 忘れさせて」などのフレーズから、おそらくこの曲では報われない悲しい恋が描かれているのではないか。そんな言葉を歌う2人の声からは美しさと哀しさが感じられる。 ちなみにKanariaはこの曲を投稿した翌日の8月24日に、 今後Vtuberとして配信活動もしていくことをYouTubeライブ内で発表した。その理由は、Kanariaのなりすまし行為が多発していたことが原因とのこと。例を挙げると、Kanariaを装ってとある配信者にスパチャを投げている人や、Kanariaを名乗って「Apex Legends」をプレイし、そこで知り合ったプレイヤーと恋愛関係になろうとしている人がいたのだという。今までの活動において、自分の人間性やどんな人物なのかを発信することを極力控えていたというKanariaだったが、それを逆手にとった悪質ななりすましをされている状況を鑑みて、彼は自ら表に出ることにしたのだ。 またKanariaは「一度やったことは、自分が満足いくまでやり遂げたいんです。一度でも配信をするのなら、ちゃんとKanariaの活動の1つにしたいのがあって」と配信活動をしていく意図についても言及。具体的な活動についてはほとんど決まっていないようで、視聴者にXで「Kanariaさん」と書いたうえで“やってほしいこと”をポストしてほしい、と呼びかけた。 8月31日には「【部屋紹介】曲作ってる部屋を見せるKanaria」と題して、こだわりの楽器や機材を解説する配信を行った。Vtuberでの活動を通して、彼の楽曲の魅力もさらに知れるのが楽しみだ。 ■ 湊あくあ「あくたんのこと好きすぎ☆ソング」「キズナトキセキ with hololive JP」「#きみいろプリンセス」 8月6日のYouTubeライブで「大切なお知らせ(残念なほう)」と題して、6年間所属していたホロライブからの卒業を発表した湊あくあ。8月28日に開催した卒業ライブ「あくあ色に染まれ! / MinatoAqua Graduation LIVE」は、Vtuber史上最高の同時接続数を記録して大きな話題となった。 そんな大きなトピックがあった今週は、いかに彼女の存在が大きかったかを示すかのように、MVランキング100位以内に湊あくあの3曲が初登場。 ※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場66位 66位の「あくたんのこと好きすぎ☆ソング」は、ちょっとしたことで相手から好かれていると思い込みやすい湊あくあを象徴するセリフ「あてぃしのこと好きすぎ」から生まれた2022年1月リリースの曲。発売から時を経て、卒業ライブ2日前の8月26日にMVが公開された。「メイド服脱いだら ただの女の子だけど / ご主人との思い出 作れますか」「遥か未来で しわくちゃになったって / 思い出してくれるよね?」などのフレーズは、2年半前の曲でありながらまさに今の彼女の心境と重なる言葉に思えて胸が熱くなる。 ※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場72位 72位の「キズナトキセキ」は卒業ライブ当日にリリースされた楽曲だ。軽やかで明るいサウンドながら、歌詞はこれまで支えてくれたファンに対しての感謝が感じられる。特に「ココロの弱さを見せること / 存外悪いコトじゃない / 6年分の笑顔を ありがとう」や「サヨナラはキズナの / いつか辿り着く終着点」といったフレーズに思わず涙が込み上げる。 ※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場87位 87位の「#きみいろプリンセス」は卒業ライブ開演直前にMV公開された最後のオリジナル曲。2020年8月リリースの初オリジナル曲「#あくあ色ぱれっと」を手がけたJunkyが提供しており、作詞には湊も参加している。歌い出しでは彼女が活動を始めた頃の気持ちが歌われていて、リスナー1人ひとりと出会えたキセキ(奇跡)やともに歩んだキセキ(軌跡)を表現しているように思う。3曲それぞれに湊あくあの生き様が感じられて、彼女がいた6年間を楽曲を通じて噛み締められる。 ■ ちゃんみな「NG」 ※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場86位 世間に「NO」と言われ続けてきたことへの思いを強烈に表現した、ちゃんみなの新曲「NG」が8月9日に配信リリースされた。同曲は、彼女が初めてプロデューサーを務めるガールズグループオーディションプロジェクト「No No Girls」のテーマソングになっている。 今年7月にASH ISLANDとの結婚と第1子の妊娠を報告したちゃんみな。今回のMVでは妊娠中の大きなお腹を堂々と見せて踊っており、その姿からは体を張ってこの曲を多くの人に届けようとする彼女の強い意志と覚悟を感じる。MV監督は、TWICEやITZYなど韓国の人気アーティストの映像を手がけているキム・ヨンジョが務めた。 8月27日にMVが公開されると、YouTubeのコメント欄には「出産後は子供のために自分を犠牲にして我慢するのが『いい母親』だと思っていたのですが、いい意味で強烈にNOを突きつけられました。子供がいても私は私でいていいんだなと。好きな服を着て好きなことをします。勇気づけられました」と楽曲に励まされたリスナーの声が多く上がった。なお、ちゃんみなはMV公開と同日にInstagramに投稿した写真で「産休入ります」と明かしている。 ■ 真貝聡 ライター / インタビュアー。雑誌やWebで執筆するほか、MOROHA「其ノ灯、暮ラシ」、BiSH「SHAPE OF LOVE」、PEDRO「SKYFISH GIRL-THE MOVIE-」といったドキュメンタリー映像作品や、テレビ特番「Mrs. GREEN APPLE ~Review of エデンの園~」にインタビュアーとして参加している。