イチローの超異例契約の真相とは?「日本復帰の可能性も契約上は残る」
2月の段階で、チームは開幕戦を日本で行うことを知っていた。大リーグ機構としてもイチローには出場して欲しい。マリナーズもそれを願う。日本のファン然り。あとは本人がそれを了承するかどうか。 それはある意味、イチローが利用されることにもなる。 それは彼が嫌うことでもあるが、前出の関係者は、こう続けた。 「見方を変えれば、イチローがそれを利用することも出来る。開幕戦がなければ、今回でそのまま引退を迫られていたかもしれない。来年3月のイベントがあることで、猶予が与えられた。後は、それをどうイチローが生かすか。考え方次第では、チャンスだ」 辻褄そのものは合う。誰もそういう目論見があったと表立っては認めないかもしれないが、うまく機能すれば、WIN-WIN。よく練られた筋書きといえよう。 もちろん、そこには、イチローに対するマリナーズの配慮も滲む。 間違っても、他球団のユニホームを着てほしくない。かといって、スポットがない。しかし、日本で行われる開幕戦は、ロースターが通常の25人ではなく、28人なので、イチローをそこに入れられる。そこまではお膳立てをし、あとは、イチローに託す。結果を残してくれれば、その先の道も開ける。 今年に関しては、契約が3月7日までずれ込み、その後、故障などで、十分な調整時間がなかっただけに、もう一度、納得行くまで準備をして開幕を迎えて欲しい、という思惑もあるのではないか。 何から何まで、異例づくし。その裏にはしかし、様々な気遣いがあった。だからイチローもこう言ったのだろう。 「チームがそういうスタンスでいてくれる、こんな形を取ってくれたというのは、信じられないことですよ。これがシーズンの後半であれば、それなりの時間を過ごしたことになるし、時間をかけて見られるものがあると思う。ただ、時間が短かったので、それでこの判断をしてくれたことに応えたい、という思いが生まれるのは、当然じゃないでしょうか」 なお、ディポットGMによると、今回の合意はイチローの意思により、破棄できるとのこと。現実的かどうか分からないが、仮に日本の球団からオファーがあり、イチローが受けるというのであれば、ルール上は可能だそうだ。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)