世界トップクラスの職人たちが働く、シャネル傘下のメゾンが集結する施設を見学
9月21日と22日は、ヨーロッパ文化遺産の日でした。1年に一度、立ち入ることのできない施設や文化遺産など、普段は非公開の場所が開放されるのですが、今年は前から行きたかったLe19Mに行ってきました。 【画像】Le19M 2022年にオープンしたLe19Mには、シャネルの傘下にある12のメゾンが入っており、世界トップクラスの職人約700名が働いています。 Le19Mという名前の由来は、Le19Mがあるのはパリ19区(とオーベルビリエ)、ガブリエル・シャネルが生まれたのは8月19日、その19日から生まれた香水のNo19です。さらにMaitre d'Art(芸術的職人技)、Mode(ファッション)、Main(手)のMを組み合わせました。 ルディ・リッチオッティ設計によるLe19Mの建物は、白い糸で覆われたようなデザインです。ルディ・リッチオッティというと、マルセイユに行ったときに見かけたヨーロッパ地中海文明博物館(MuCEM)もコンクリートメッシュに覆われており、コンセプトが似ています。Le19Mの敷地は2万5500m2と広大で、広々とした中庭もあり、自然の造形美から創造性も刺激されそうです。 12あるメゾンのうち、ヨーロッパ文化遺産の日に見せてくれたメゾンはルサージュ(Lesage)です。1924年創業で、2002年からシャネルの傘下に入った、オートクチュール専門の刺繍をするメゾンです。 作業の様子を見せてもらいましたが、刺繍の工程はざっとこんな感じです。シャネルをはじめ有名メゾンから来たデザインをもとに模型と見本を作り、トレース紙を通して刺繍の模様を布に移します。その布を木枠にはめ、刺繍師が一針一針刺繍していきます。どれも根気のいる緻密な作業です。この日、刺繍の実演をしてくれたのは2人の日本人女性でした。海外で活躍する日本人の姿を見られるのはいつもうれしいものですね。 ルサージュは刺繍の学校を持っていますが、サイトを見ると日本語のページもあるので、日本からルサージュの刺繍を学ぶに来る人は多いということなのでしょうね。 ルサージュにはテキスタイル部門もあり、手織り機で織る工程も見せてくれました。プラスチックや紙といった変わった素材も使うため、これまた高度な技術が必要そうです。 ルサージュを見学後は、Le19M内にあるギャラリーに行きました。2025年1月5日までルサージュの100年を振り返る展示が開かれており、入場は無料です。 カール・ラガーフェルドやヴィルジニー・ヴィアールの服を中心に、ここでも刺繍の工程の説明を見られますし、現代アートになっている作品も展示されています。 このほかLe19Mでは刺繍の体験アトリエなどもやっています。天井の高い広々したカフェもあり、ここではオリジナルグッズを買うこともできます。 Le19Mで作っているものは、庶民の私にはとても手の出ない、そもそも自分が使うものとしては興味もないものですが、眺めるアート作品として見れば大変興味深く、それを作り上げるクリエイターたちの情熱と、それを形にする職人の姿を間近に見られる貴重な機会となりました。
トラベル Watch,荒木麻美