現場に赴き、迫真の物語に 「足で稼ぐ」気鋭の講談師・宝井琴鶴さん、市場開拓目指す
昨年に没後60年を迎えた横浜出身の作家、長谷川伸の生い立ちを題材にした作品を自作した際は、日ノ出町にある記念碑の根元で昼寝をする高齢の男性を見かけた。「横浜のディープさを表していると考え、にぎわい座の高座で伝えた。お客さんに情景、空気感を感じてもらえたと思う」。
■「芸と営業の両輪」
話芸の追求とともに力を入れているのが子供向けの講談教室、ワークショップ。東京、神奈川、静岡、鳥取などで自ら披露するだけでなく、参加者たちにも体験してもらう。現地に行く時間がないときは、オンライン会議サービスを使う力の入れようだ。「講談になじみがある世代が少なくなる中で、次世代のお客さんを育てないといけないという危機感がある」。
講談協会の動画配信も担い、慎重な先輩たちを説得しながら宣伝活動に力を入れる。「芸と営業の両輪で講談の市場を開拓し、後輩たちも活躍できる場を作りたい」。気鋭の講談師は業界の未来を見据えている。(高久清史)
◆たからい・きんかく 横浜市出身。平成18年4月に宝井琴星さんに入門し、同6月に前座となり宝井琴柑(きんかん)を名乗る。22年6月に二ツ目昇進、令和元年10月に五代目宝井琴鶴を襲名して真打昇進。今月23日に「横浜にぎわい座」で行われる独演会「宝井琴鶴 神奈川をよむ シリーズ第九弾」は午後2時開演、全席指定で入場料3200円。