20歳・堂安律に起きている環境変化「右サイドハーフを極める」
「攻守両面でハードワークする部分は、オランダリーグでの1年間で培われたと思っているので。自分としては右サイドのポジションを極めたい、という気持ちがありましたし、さらに伸ばさなければいけない部分をチームでできないところで、ちょっと難しい状況になっています」 ファベル監督の起用法に異を唱えているわけではない。ただ、堂安としては守備面でも躍動し、いいリズムを作り出しながら攻撃につなげていくことでチームに貢献できるという思いを強めていた。 実際、フローニンゲンも開幕10戦を終えて1勝1分け8敗と大きく出遅れた。堂安自身も先発フル出場を続けながら、ゴールはフィテッセとの開幕戦であげたひとつだけにとどまっていた。 忸怩たる思いを抱きながら迎えたウルグアイ戦で、トップ下の南野拓実(ザルツブルク)、左サイドの中島翔哉(ポルティモネンセSC)と再び2列目を形成した。森保ジャパンの初陣となった9月のコスタリカ代表戦で何度も感じた、心の底からサッカーを楽しむ快感が何度も全身を駆け巡った。 代表初ゴールだけではない。前半36分には堂安のスルーパスを受けた中島が放ったシュートのこぼれ球を、FW大迫勇也(ベルダー・ブレーメン)が押し込んだ。後半21分にはMF柴崎岳(ヘタフェ)の縦パスに反応し、強烈なシュートを一閃。相手キーパーが弾いたボールを南野が押し込んだ。 「描いている絵が3人とも同じ、という瞬間が多いので、そこは共通意識をもってプレーできています。それほど多くコミュニケーションを取っているわけではないですし、ピッチのフィーリングも大事になってくるので、あまり考えすぎず、いままで通りプレーすることがよさにつながると思っています」 森保ジャパンで初めてトリオを結成したにもかかわらず、まるで何年も日本代表で顔を合わせているかのような以心伝心のプレーで魅せる。2列目で奏でられる至高のハーモニーは新生日本代表の象徴となり、海を越えたオランダへも伝播。フローニンゲンの指揮官に堂安の再転向を決断させた。 そして、待望の右サイドハーフで攻守両面に絡みながら、今月に入って行われたエクセルシオール、ヘーレンフェーンとのリーグ戦で連続ゴールをゲット。チームも連勝をマークしたとあって、堂安は「すごくいいフィーリングで帰国できました」と声を弾ませる。 もっとも、長く日本代表の攻撃陣を支えてきたビッグ3、本田圭佑(メルボルン・ビクトリー)、香川真司(ボルシア・ドルトムント)、岡崎慎司(レスター・シティー)に変わる「新ビッグ3」という言葉には「そう呼ばれてきたメンバーとは、すべてで比較になりません」と謙遜する。 「経験も違いますし、自分たちが残してきた形跡とみまったくレベルが違う。僕自身もまだまだ比較にならないので、少しでも追いつけていけるようにこれからも頑張っていきたい」 オランダの地でも取り戻しつつある輝きが、堂安の立ち居振る舞いに自信を与える。世代交代と世代間の融合を進める森保一兼任監督のもとで、東京五輪世代から大抜擢されたホープは新生日本代表でも存在感をどんどん高めながら、4年後のワールドカップ・カタール大会へ向けて絶対的な居場所を築きつつある。 (文責・藤江直人/スポーツライター)