焼いたホタテ貝の粉 家畜の糞に混ぜて薬剤耐性菌克服 酪農学園大など
そのため、環境を選ばず殺菌できるよう、臼井教授はホタテの貝殻を加工した粉末を取り寄せ、豚とウシの糞便を対象に様々な環境下でどのくらいの量を添加すれば薬剤耐性菌が検出限界以下になるか実験した。なお、ニワトリの糞は発電所で焼却処理することが多く、環境排出されにくいとして実験対象から除外した。その結果、糞便の量に対して4パーセントの粉末を混ぜ込むとすぐに、緑膿菌や黄色ブドウ球菌といった薬剤耐性菌がほぼ殺菌できることが分かった。1週間以上経っても菌が再び増えることもなかったという。
臼井教授は今後、産学連携で焼成したホタテ貝殻粉末の商用化を目指すという。糞の処理にコストがかかりすぎると食肉の価格に反映されてしまい、消費者が困る。北海道からの発送は輸送コストもかかる。そのため、「費用を抑えながら、研究を通じて循環型社会の中で『人間の健康を守るために動物の健康を守る』というワンヘルス・アプローチの考え方を浸透させていけるような手法を考えて実用化したい」とした。
研究は日本学術振興会の科学研究費補助金の助成を受けて行われた。成果はオランダの科学誌「エンバイロンメンタル テクノロジー アンド イノベーション」電子版に3月2日に掲載され、同11日に酪農学園大学が発表した。