「父は桃太郎というやつに殺されました」…童話から学ぶ「正義」が持つ意外な危うさとは
近年注目が集まっているアントレプレナーシップ。「起業家精神」と訳され、高い創造意欲とリスクを恐れぬ姿勢を特徴とするこの考え方は、起業を志す人々のみならず、刻一刻と変化する現代社会を生きるすべてのビジネスパーソンにとって有益な道標である。 【漫画】頑張っても結果が出ない…「仕事のできない残念な人」が陥るNG習慣 本連載では、米国の起業家教育ナンバーワン大学で現在も教鞭をとる著者が思考と経験を綴った『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』(山川恭弘著)より抜粋して、ビジネスパーソンに”必携”の思考法をお届けする。 『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』連載第60回 『なぜ日本人は「お金儲け」を嫌うのか…目の敵にされる「お金儲けをする人」の正体とは』より続く
正義は主観
2013年の新聞広告クリエーティブコンテストで最優秀賞を取った作品のキャッチコピーは以下のようなものです。 「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。」 その後、さまざまな小説投稿サイト、同人漫画で、鬼目線の桃太郎が描かれました。桃太郎は、人間を襲い金品を奪っている鬼を退治する物語です。しかし、物語ではその鬼の悪行が明確に描かれていないこと、鬼=悪という前提で物語が進むことから、このような「逆説」が可能になりました。 戦争のほとんどは、それぞれの国の正義のもとに行われています。正義感はとても大切ですが、気をつけなければいけないポイントは、正義とは主観だということです。つまり、人によって、変わるものです。そして、最も怖いのは「正義感は視界を狭くする可能性がある」という点です。つまり、正義は主観的、相対的なものだということに気づきにくいのです。
正義感と倫理観の違い
いま、ほとんどの人は、戦争は可能な限り避けなければならない、暴力は悪だと認識しています。しかし、第二次世界大戦当時、多くの日本人は「鬼畜米英」と叫び、敵国を打ち負かすことを正義ととらえていました。二・二六事件でクーデターを起こした青年将校たちも、彼らなりの正義感で行動していました。中東での紛争も、多くの要因が絡んでいますが、それぞれの「正義」のもとに、戦争が起こっています。 正義とは、その個人、集団によって異なります。正義を普遍的なものととらえると、自分が信じる正義と異なる正義は認めることができず、争いになります。 一方、「自分はどうあるべきか」を考えるのが倫理です。起業家ならば「自分の事業はどうあるべきか」を考える、それが起業の倫理です。自分や自分の事業のあるべき姿が、人によって違っているのは当たり前です。
山川 恭弘