呪われたプロレス一家を描いた映画「アイアンクロー」出演、俳優ジェレミー・アレン・ホワイトにインタビュー!
ドラマ「一流シェフのファミリーレストラン」で気難しい天才シェフを演じ、一気にスターへの階段を上り詰めたジェレミー・アレン・ホワイト。4/5公開の映画「アイアンクロー」ではまるで別人のように鍛え上げられた身体で、プロレスラー役を見事に演じた。体作りの秘密から料理の腕前まで、知られざるジェレミーの新たな魅力を掘り下げる独占インタビューをお届けする。 フォン・エリック家を描いた映画「アイアンクロー」の写真を見る
呪われたフォン・エリック家の真実に基づいた話
こんなことが本当にあったとは。いや、本当にあって良いのか。 「アイアンクロー」は、とてつもなく重く、暗い映画だ。だが、その信じられない話の先には、人間の強さと希望、そして奇妙な温かさが待っている。監督、脚本のショーン・ダーキン(「不都合な理想の夫婦」)が「ギリシャ悲劇のよう」と形容するこの映画を観た人の評価は非常に高い。北米で観客の感想調査をするシネマスコア社で得たグレードは、A24の作品中過去最高の「A-」。毎日観客の評価を集計するロッテルダム国際映画祭では、400本以上の作品が次々に上映されるにもかかわらず、ずっとトップ10内にとどまり続けた。 プロレス界の伝説、フォン・エリック一家の物語。アントニオ猪木やジャイアント馬場とも対戦したことがある父フリッツは、息子たち全員をレスラーに育て上げ、史上最強の家族となることを目指した。息子たちは厳格な父を尊敬し、日々、激しい特訓に挑む。唯一、プロレスに興味を示さない末っ子すら、やがて家族の一員として与えられた使命に向き合うようになる。互いの中で競争もあっても、兄弟はみんな仲良し。しかし、“呪われた家族”であることを自分たちでも知っている彼らには、ひとつ、またひとつと、悲しい出来事が起きていくのだった。 ■シェフからプロレスラー、カルバン・クラインの広告モデルまで! 4人いる兄弟のうち、3番目のケリーを演じるのは、今、最もホットな俳優ジェレミー・アレン・ホワイト。主演ドラマ「一流シェフのファミリーレストラン」でプライムタイム・エミー賞、全米映画俳優組合賞はじめあらゆる賞を総なめした彼は、最近、カルバン・クラインのアンダーウェアのモデルにも抜擢されたばかりだ。「一流シェフ~」のために料理学校に入り、レストランで修行をしたが、今作ではまた大変身。見事なプロレスラーの肉体と動きを見せつける。この映画にかける思いと、ハリウッドで注目される存在になった気持ちを聞いた。 ■一体どうやって肉体改造したのか? ジェレミー独占にインタビュー! ──すばらしい映画です。あなたの変貌ぶりにも驚きました。 ありがとう。これは、僕が大きな情熱をかけた作品です。ショーン・ダーキン監督とは、長年の知り合いで、彼は僕が16歳の時に出た初めての映画のプロデューサーだったんですよ。ショーンがケリー役をオファーしてくれた段階で、ケリーの兄ケビン役には、すでにザック・エフロンが決まっていました。ザックと共演できるのも、僕にとっては魅力でした。 でも、僕はプロレスについてほとんど知らなくて、ケリーについて検索してみたら、すごく大きな体の人だったとわかりました。それでショーンに「僕はこの役にふさわしいのでしょうか?」と聞いたのですが、「もちろんプロレスのシーンはできるだけ自分でやってほしい。肉体作りも、やりたいならやってくれればいい。でも、僕にとって一番大切なのは、彼らの精神をきちんと描くことだ」と言われたのです。 ──そのように言ってもらえても、あなたは肉体作りとトレーニングに真剣に励んだのですね。 役者として、自分自身とまるで違うものになれるチャンスをもらえることは、いつだって願うところですから。肉体的に変革することで、よりすんなりとキャラクターに入っていけるのです。自分だけではなく、ヘア、メイク、衣装などの担当者のおかげももちろんありますが。 肉体作りのためには、とにかく食べました。とりわけタンパク質をたくさん。チキン、魚、野菜、玄米などを、2時間おきくらいに食べていましたね。僕はもともと小柄なので、あそこまで大きくはなれないにしろ、強い、たくましいと自分で感じられるよう、筋肉をつけたかったのです。トレーニングは毎日。1日に2回やることもありました。有酸素運動、ウエイトリフティングなどですが、普段とは違うやり方です。プロレスは(元プロレスラーの)チャボ・ゲレロ・Jr.に指導してもらいました。体にあざができたし、朝起きて筋肉痛がするなどということはよくありましたが、病院に行くようなケガは、誰もしていません。 ■プロレスラーを演じて変わったこと ──本作ではレスラー、「一流シェフ~」ではシェフを演じましたが、個人的に未経験の分野のプロを演じる上で、プレッシャーはありますか? ええ、もちろんあります。新しいスキルを取得し、カメラが回る中、大勢の人に囲まれてそれをやってみせなければなりません。しかも、完成作を多くの人が見るのですから。不安を乗り越えるためには、とにかく、繰り返し練習すること。時間をかけ、同じことを何度も、何度もやることです。チャボとの特訓でも、僕たちは、考えなくても勝手に体がそう動くよう、同じことを何度もやりました。それが一番のアプローチだと僕は発見しました。 ──これらの役を通して、レスラーやシェフに対する見方は変わりましたか? どちらの職業にも、今では以前よりずっと強い尊敬を感じています。これらの職業には、日々、多くの努力が要求されます。「一流シェフ~」のためにはレストラン業界をリサーチし、キッチンのことも理解しました。この映画を通じて、プロレスというのはスポーツであるだけでなく、物語を語るような要素、またダンスのパフォーマンスをするような要素もあるのだとわかりました。 それに、僕たちは4ヶ月ほどトレーニングをして、3ヶ月ほど撮影をしたら終わりでしたが、レスラーたちはあの生活をずっと続けているのです。しかも、遠征もあります。一年のうち200日も自分の家以外のところで過ごしつつ、あの肉体を保ち続けないとならないのです。本当に感心します。 ──「一流シェフ~」が大ヒットしたせいで、あなた自身も料理が上手いと人から思われるのではないですか? それはありますね。この間も、チャリティイベントを主催するという女性から、「このイベントであなたに料理を作ってもらえたら嬉しいんですが」と言われました。僕の料理が出されたとしたら、きっと楽しいイベントになりませんよ(笑)。役のための特訓で以前よりは上手くなりましたが、みんな、それ以上のものを想像するようです。僕はまだそのレベルにはほど遠いですね。 「アイアンクロー」 4月5日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー 配給:キノフィルムズ 監督・脚本:ショーン・ダーキン 出演:ザック・エフロン、ジェレミー・アレン・ホワイト、ハリス・ディキンソンほか © 2023 House Claw Rights LLC; Claw Film LLC; British Broadcasting Corporation. All Rights Reserved.
取材と文・猿渡由紀、編集・遠藤加奈(GQ)