ジャニーズ性加害「トラウマの人もいる。本当に深刻」心のケア相談室責任者の鴨下一郎氏
旧ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川元社長(2019年死去)による性加害問題では、被害者に対する補償と並び、どのように心のケアを進めるのかも重要だ。5月末に事務所の外部機関「心のケア相談室」が設置され、元環境相で心療内科医の鴨下一郎氏が監修者を務める。共同通信のインタビューに応じた鴨下氏は「被害者の中には(性加害問題が)重大なトラウマ(心的外傷)になっている人もいる。本当に深刻だ」と語った。(共同通信=鈴木沙巴良) ▽「優越的な地位にある人間に対し、抵抗できなかったのだろう」 鴨下氏は、相談室の統括責任者が情報発信することをよく思わない相談者もいるのではないかと懸念し、取材を受けてこなかった。開設から約5カ月がたち、中間報告的な形で情報発信する意義を感じ、初めて取材に応じたという。 相談者の人数や症例はプライバシーなどを理由に公表できないとしつつ、「きちんと診断し、病名をつけないといけない症状を抱えている人もいる」と説明した。被害時の状況については「夢をかなえるために所属した組織の、優越的な地位にある人間に対し、抵抗することはできなかっただろう」とおもんぱかった。
▽「相談者に寄り添い、トラウマを乗り越えるのを手伝う」 旧ジャニーズ事務所は所属経験者を対象にした「心のケア相談窓口」を5月末に開設した。窓口に問い合わせてきた人のうち、心のケアが必要な人には「心のケア相談室」が対応しており、鴨下氏がトップとして監修しているという。 相談室は、児童虐待やカウンセリングを専門とする女性のベテラン公認心理師10人弱で発足。ケースに応じて医師を加えるなど、体制を拡充してきた。鴨下氏自身は直接面談せず、報告を受ける立場だという。 深刻なケースでは「1回話してそれで終わり、というわけにはいかない。相談者に寄り添って、トラウマを乗り越えるのを手伝う必要がある」と強調した。旧ジャニーズ事務所側から相談室の開設期間は1年間と伝えられたと明かし、「とても1年で区切れるような簡単なことではない。相談者たちが継続を望めば(1年を超えて)継続されることになるのではないか」との見解も示した。