【NISA】投資信託の運用会社が突然の業務終了…個人投資家はどのような不利益を被る?
ペイオフとはどう違う?「分別管理」
一般常識として私たちが知っておくべきこととしては、この「分別管理」という言葉です。これは投資信託の信託財産、つまり投資家のお金は、資金を預かる信託銀行で分別管理され適切に保全されているという意味です。分別というのは、自社の金庫に投資家のお金は入れない、別々に管理が行われているということです。 例えば、銀行にはペイオフ制度があります。これは預金保険制度と呼ばれるもので、銀行が万が一倒産しても一定の資金は保護される仕組みです。 具体的には、当座預金や利息の付かない決済用預金は、全額保護。また定期預金や利息の付く普通預金等(一般預金等)は、預金者1人当たり、1金融機関ごとに合算され、元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されます。それを超える部分は、破綻した金融機関の残余財産の状況に応じて支払われるため、一部支払われない可能性があります。 一方証券会社は預金保険制度の対象ではありません。その代わり、金融商品取引法で、投資家から預かったお金、例えば株を買うお金、投資信託を買うお金などは、証券会社自身の資産とは分別管理するように義務づけられているのです。 またその中でも投資信託は、販売をする証券会社、運用を行う運用会社、資金を管理する信託銀行と3つの機関が関係していますが、投資家のお金はすべて信託銀行で分別管理されているので、仮に運用会社が破綻(今回は事業の終了ですが)しても問題ないと説明しているのです。
運用期間満了の前に運用が終了するとどうなる?
さらにPayPay証券では以下のように続けています。 「弊社(PayPay証券)で取り扱っている投資信託のうち、PayPay投信 NASDAQ100インデックスとPayPay投信 NYダウインデックスについては、すでに運用会社から繰上げ償還をすることが発表されているので、10月31日15時にて新規買い付け・新規つみたて設定を終了、現在設定されている積立設定も解除する」としています。 繰上償還とは本来の運用期間満了の前に運用を終了し、その資金を投資家に返還することです。運用会社のホームページでは繰上げ償還の対象となっている投資信託はPayPay証券が扱う2本以外にもPayPay投信バランスライトと米国株式インデックスがありますが、具体的な償還のスケジュールには触れられておらず、運用が継続する限りにおいてはこれまで同様なので投資家は保有するか解約するかの判断をして下さいとの説明に留まっています。 一方ここについてPayPay証券では、今後は該当する投資信託については売却のみ可能となるため、代替えとして同証券会社で扱うそれぞれの投資信託とベンチマークを等しくするインデックスファンドを紹介しています。 とはいえ、NISAで投資可能枠上限まで消化している方については、代替えの投資信託を購入する際、非課税投資の枠はすでになくなっているので、売却のタイミングとは別に来年以降の新規買い付け時期も改めて検討するようになります。 同じ関連会社でもPayPay銀行では、アセットマネジメントの業務終了についてはなにも伝えていないようです。もちろん繰上げ償還が決定しているPayPay投信バランスライトと米国株式インデックスの個別のページも同様です。また扱いは異なりますが、運用が今後アセットマネジメントOneに引き継がれるPayPay投信AIプラスについても特段説明はありません。 一般的には運用会社に関する情報に意識を向けている人は多くはないでしょうから、販売会社である証券会社や銀行が何の情報発信もしないでいると、自分が投資している投資信託が繰上げ償還されることを知らないままの人も多いのではないでしょうか? すると各々の償還スケジュールにのっとり投資信託が売却され資金が返還されることになります。利益がでているタイミングであれば問題はないのでしょうけれど、資金が流失したりして基準価格が低下したタイミングで売却されると思わぬ損失を被ることもあり得ます。 特にNISAで購入している投資信託の場合、特定口座での運用のように損益通算や損失の繰り越しができないので、さらにデメリットが拡大する可能性もあり注意が必要です。 PayPay証券のお知らせに戻りますが、ここで扱っている投資信託のうち以下の5本については、アセットマネジメントOne株式会社へ運用会社の変更が予定されています。 ・PayPay投資信託インデックス先進国株式 ・PayPay投資信託インデックス世界株式 ・PayPay投資信託インデックスアメリカ株式 ・PayPay投信 日経225インデックス ・LOSA長期保有型国際分散インデックスファンド 運用会社の変更とは、これまでの運用を別会社に移し継続するという意味です。すべてインデックスファンドなので、運用会社の変更により、運用の基本方針等が変わる可能性は低いといえますが、いずれにしろ詳細が発表されるのを待つしかありません。 上記5本の投資信託は、すべてNISAのつみたて投資枠で購入が可能な商品です。もともとつみたて投資枠での購入が認められる投資信託としては長期の運用を前提としているので繰上げ償還という選択肢はないのかも知れません。 例えば、PayPay投信 日経225インデックスは、つみたてNISAでの購入が可能で、信託報酬は0.143%と同じカテゴリーの中でも最安値です。運用を引き継ぐアセットマネジメントONEが運用するたわらノーロード日経225と信託報酬も同じですから、同様の運用が継続されるのかも知れません。